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020号室 (GEN side) ページ21

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「……Aが煙草吸ってる」

「……見られたか」

「……見つけちゃったよ」






たまたまベランダに出たらよく鼻に香ることのある、でもこんなところではきっと縁なんてないだろうと思っていたその香りを隣の君が漂わせていて、




「……また忙しそうじゃん」




不覚にも、美しいな、と思ってしまった。





「……世の中は、矛盾でできている」

「……世の中は、矛盾でできている」

「……なんか吉留さんが言うと全部歌に聞こえるなあ」

「なにそれ。そんなことないでしょ」

「あります。歌作ってくださいよ」

「むりむり」






もう少しで夏がやってくる。

そんなAの服装ももちろんもう初めにあった頃よりも肌の露出が増えていて、それでもゆるゆるとした、楽チンなんだろうな感は変わらない。



1本だけ吸う予定だったのか、はたまた俺への配慮か、彼女はふぅっと最後の一息を吐き終えた後にまた新しいものを口へと運ぶ仕草は見せなかった。






「……俺のいらないフォーリミTシャツあげようか」

「……いらない、なんて可哀想」

「Aどうせ夏、Tシャツしか着ないんだろうなと思って」

「……バレてる」

「わかるよ。俺ずっとAのこと考えてるから、」





それくらいは分かる。


告白めいた言葉を口にしたって、伝わらない、受け取ってなんてくれないことは分かっているのに、つい口がすべって、ころんで、ねっころがって。






「……デート、しばらくできそうにないです」

「……ほんとにしてくれるんだ」

「休みがなさそうなんですよね。残念やけど」

「もう、もっと心込めて残念がってよ」

「ウワ〜残念やなあ、551の豚まんがない時くらい残念やなあ〜」

「それ、ギリギリ分かるけど分かりずらい」





アツイあつい夏が始まると、別名『夏のエンドレス地獄真っ只中ツアー』、いわゆる夏フェスたるものが始まってしまう。





「Tシャツ、何枚かあげるよほんとに。今度ポスト入れとく」

「……入るかな」

「……じゃあ頑張ってA捕まえる」

「それもできるかなあ」







彼女はきっと、来てくれないんだろう。

そういえば、あの時は夏フェスが苦手な理由、聞かなかった。







「……捕まえられるでしょ、いつか」






俺の想いもろくに伝えられないまま新しい季節とやらは巡り巡ってくるのかと、日の流れる早さをほんの少しだけ恨む。

その一瞬、苦いあの香りがふわっとまた、鼻を掠めた気がした。






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ちわわ - 初めまして!もうめちゃくちゃ刺さりました…大好きすぎる作品です…!第2章のパスワードを教えていただいてもよろしいですか…? (2022年6月3日 2時) (レス) id: 8e9e78c35a (このIDを非表示/違反報告)
- 初めまして!とても素敵な作品ですね!続きが気になります!第2章のパスワードを教えていただけますか? (2021年3月26日 17時) (レス) id: ce4eaa6c55 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダマカロン(プロフ) - 第二章と片岡さんのお話のパスワードを教えてもらいたいです! (2020年10月10日 2時) (レス) id: 41c2841ae6 (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - はじめまして!素敵な作品で一気読みしちゃいました(TT)第2章も他の作品も是非読みたいです! (2020年3月6日 1時) (レス) id: 9a92e69ecf (このIDを非表示/違反報告)
- 好きです、でした、、汗 (2020年2月14日 1時) (レス) id: bbe11dd873 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヨムヨム | 作成日時:2019年9月11日 12時

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