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「おいで」
御館様はいつも私を甘やかす。
そして近くに行けばいつも頭を撫でてくれる。
恥ずかしながらも、私はそれが好きだ。でも、嫌いでもある。
時が経つごとに、その手は力を失っていく。
また私が奪ったような感覚に陥る。ご病気のせいだと、頭では理解しているのに。
「いえ、なりません。
御館様、先週上野の街にて下弦の鬼と対峙しました。」
「そうか、鴉から話は聞いているよ」
「雨柱として不甲斐ないです。まさか逃がすだなんて」
「気に病むことは無いよ。Aの事だから必ず倒せると信じているからね」
御館様は私が落ち込んでいると、必ず慰めてくれる。
私のかわいい子供だ、そんなことを言って。
結局その言葉に甘えてしまうのは、私がまだオトナになりきれてないからだろう。
「A、鱗滝左近次の元に行ってくれるかな。
どうやら鬼を連れた子が鍛錬してるらしいんだ。」
「鬼?」
鬼が何故……?人間とともに?
「お、お言葉ですが御館様。
その鬼は、人を襲わないのですか」
「行けばわかるよ」
優しい笑みを浮かべたかと思えば、すぐに咳き込む。
付いてたあまね様が介錯する。
ああ、まただ。また、私が奪ってしまった。
現実味を帯びない錯覚、認めたくない。
ポツリ、雨が降る。
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作者名:ヴィズ | 作成日時:2021年5月11日 21時