片想いシンドローム

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「…え?」

可愛い、なんて思っていたら
抱きしめてしまっていた。

でも大倉さんの声にハッとして、咄嗟に離れる。



ニヤニヤして、嬉しそうにしている目の前の人に
また少し胸が鳴るのは、お腹が空いているせいなのか…
そうだという事にしておこう。



「何で離れるん」

距離を置こうと後退るけど、また直ぐに手を引かれ、引き戻されて、大倉さんの腕の中。


「いま、ぎゅってしたやろ」

「……してないです」

「…ほんっま、可愛いな」



可愛いくない、の間違えでしょ。
って言いたかったのに


有無も言わせない愛おしげな目線に、

吸い込まれる様に近ずいた唇に、

もう逃れられなかった。


と、言うか、逃げなかった。




再度背中に回した腕に、また嬉しそうにニヤニヤしながら、それでも唇は全然離してくれなくて
それにまた可愛いなんて思ったから…
もうどうにでもなれ




やっぱり、大倉さんは鋭い人で、
私の少しの心の揺らぎでさえも、見逃してくれない。

何でも見透かされてるのは、やっぱり気のせいじゃない。




あの人も、この人も、
本当に…ずるいなぁ。







…こんなときでも頭に過ぎってくる、あの人の切ない笑顔。
触れられている頬の手の温もりが、余計にあの時の記憶を呼び覚ます。


どうか、
気付かれていませんように。





…ずるいのは、結局私の方だ。







そんな事を考えていると、




「A、」

「……あっ！ダメです！！」

「えっ？」

「この先はダメです」

「ここまでさせといて？！」

「…じゃあ離れます」

「嘘！ごめん！」

「ていうか、いい加減お寿司食べたいです」

「俺はAが食べたい」

「………」

「嘘！嘘やで！」



その後、美味しくお寿司を頂きました。

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