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正門「ところでAちゃんはなんでいつも空見てんの？」
「うーん、なんか上を向いていないと、苦しくて」
何回かここで会うようになってから
受けた質問にぎこちなく答えた。
正門「苦しい？」
「うん、でも正門くんといると苦しくなくなるの」
正門「ええ〜なにそれ嬉しいなぁ！多分やけどAちゃんは優しすぎるんやと思うで」
「やさしい...」
正門「うん、自分で気づいてないだけでびっくりするぐらい気遣い屋さんやろ」
月の光に照らされる優しげな眼差しに
胸がドキっと音を立てる。
優しいのはこんな私に
付き合ってくれる正門くんの方だと思うけど、
そう言葉にする前に頬に一滴の雨が落ちる。
「あ、雨や」
正門「ほんまやなぁ、もうそろそろ梅雨やもんな」
「梅雨は好きになれへんな」
正門「それは空見えへんくなるから？」
「うん」
今まではそうだった。
しかし好きになれない理由が増えてしまう。
雨で夜空を見上げられないなら
私がここに来る理由はない。
ここに来なければ正門くんには会えない。
しめった空気と頬に感じた水滴が
私と彼を繋ぐ唯一のモノを奪ってしまう。
「しばらくは夜空は家でみることにするよ」
正門「そっか、さみしなるなぁ」
「そうだね、いつも話し相手になってくれてありがとう」
そう言って彼に目を向けると
なぜか目を丸くしてこちらをみていた。
「ん？正門くんどうしたん？」
正門「！いや、なんでもないよ。こちらこそありがとうね。」
ポツリポツリとだんだん水滴の数を増やしていく雨雲を
恨めしく感じながら彼と別れた。
梅雨があけたらまた。
なんて確証のない約束を交わして。
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作成日時：2022年3月22日 22時
