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なので、牽制の意味もこめて、俺はクラスの中心でこう叫ぶ。
「お前らの考えてることはわかるぞ。俺たちのことつき合ってるとか思ってんだろ! そんなことねーからな! いっとくけど! マジで!」
俺はクラスのど真ん中でそう啖呵を切る。グルッペンがそんな俺をみながら、ちょっと複雑そうな顔をしている。眉間にしわを寄せて、考えこむような顔だ。
俺はそんなグルッペンにかまわず、つづける。
「でもこいつのこと一番好きなのは俺だから!」
俺が全力でそう宣言した瞬間、グルッペンが勢いよく噴き出す。一瞬だけあたりが静まりかえるが、すぐにみんながわーっとエキサイトする。
「なんだそれ告白か!?」
「告白だ!!」
「ちげーよ!! これはもっと神聖で純粋な宣言でなあ!」
そんな調子でいい合う俺とクラスメイトを、あきれた顔でグルッペンがながめている。さっき、一瞬だけみせたような複雑そうな顔は、その頃にはもうどこかへ行っていて、俺はそのようすを確認して、胸中で安堵のため息をつく。
近頃の俺たちは、そういう日々を過ごしていた。平和で、少し落ちつかないが、ささやかな緊張が心地いい距離感。ちょっとむずがゆいが、決して悪くはない日々だ。
恋だの愛だの考えるのは難しい。いずれは答えを出さなければならないだろうとなんとなく思ってはいるが、それが今である必要もないと楽観的にとらえている。少なくとも、グルッペンはそれを急かすようなことはしない。俺も、グルッペンのことを急かしたりはしない。そういう暗黙の了解が取れていることが、うれしくもあった。
だが、そんな平和な日々はそう長くはつづかない。
*
「え? なんか用事あんの?」
俺がそう問うと、「ちょっと呼び出されたんだ」とグルッペンは疲れた感じでいった。たったそれだけのやり取りで、それがどんな用か、俺はすぐに直感する。近頃そういうのはめっきり減っていたが、まあ、ゼロになったわけではなかった。こういうのも久しぶりだな、と思いながら、俺はグルッペンを送り出し、その日はひとりで帰った。
だが翌日から、グルッペンのようすが唐突におかしくなった。朝、話しかけてもまともに返事がかえらない。絶対に目を合わせようとしないし、さっさと話を切り上げられてしまう。挙げ句の果てに、白石と小泉も合わせて四人で取ることが習慣になっている昼食を欠席して、どこかへ消えてしまった。
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エス(プロフ) - あわさん» すごくうれしいですありがとうございます……!文だけでなく、grpn以外のキャラクター、オリキャラたちまでお褒めいただいてすごくありがたいです。私が書き出したかった青春の空気感が伝わったようで、すごくうれしいです。ありがとうございます! (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - 腐女神だぜ☆さん» うれしいご感想ありがとうございます!書きたいものを書きたいように書いた作品でそういっていただけるのはなによりの励みです!読んでくださってありがとうございました! (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - スラカさん» ご感想ありがとうございます!!書き手の私の「grpnかわいい〜」という気持ちがあまさず伝わったようでうれしいです笑 読んでいただいてありがとうございます! (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - るーかさん» ご感想ありがとうございます!そうですね、そういうことへのきっかけにもなれていたらこれ以上はないです!同性愛のテーマも案外普遍的で、どこにでもあるんだよということが伝わっていたらうれしいです。ありがとうございます! (2019年10月31日 19時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - 倉の中の石さん» すごくありがたいご感想ありがとうございます!その気持ちが一回ぶん以上の評価として私の胸に届きました……!ありがとうございます!のたうちまわらせることができて狙い通りって感じです……(へへ…)ありがとうございます! (2019年10月31日 19時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エス | 作成日時:2019年10月21日 23時