６４． ──第四章 修学旅行編 Bパート 終 ページ15
グルッペンはそういって、俺の肩を人さし指で小突いた。ほとんど力の入っていない、ただの触れ合いと形容して差し支えないようなものだったのに、俺は思わずよろけてしまう。グルッペンの指摘が、よっぽどショックだったのかもしれない。だって俺には、そんな自覚はまったくなかったからだ。
「……そ……そんなにみてた？」
「めちゃくちゃ。だからからかわれたりするのかもしれんな」
「お……俺のせい？」
「……お前のせいじゃないか？」
グルッペンは不敵に、にんまりと笑いながら、そういって俺をみる。それもはじめてみる顔だった。いい加減それなりのつき合いになるだろうに、いまだにこうして新しい表情をみせてくるこいつのことが、ちょっとだけまぶしい。ニヤニヤしているその顔は嫌味ったらしくていたずらっぽいが、どうしても憎めない。こいつがどんな顔をしていても、俺はたぶん憎めないんだろうなと思ってしまう。それがたとえ、最初の頃の冷たいつくり笑いでも、今の俺はきっと、それさえ突っぱねられない。その冷たさの下に、こんなにもあざやかな体温が存在するのだとわかってしまった今となっては。
「……仕方ねーじゃん」
「お？ 開きなおるのか？」
「開きなおるよ。だって俺お前が好きなんだから」
「…………」
「そりゃ、好きなもんはみるだろ。いっとくけどな、お前だってここ最近、ぼーっと俺のことみてる時間が多いの気づいてるか？ 俺が指摘しないだけで。お前だってなあ……、……おい？」
グルッペンのほうをみて、俺は仰天する。グルッペンはあろうことか、カーディガンの襟口を頭の先まで引きずり上げて、顔を隠していた。アホか！？ 少なくとも電車内でやるようなことじゃねえ！ 案の定俺たちを遠目でみていた他クラスの女子っぽいやつらがこっちをみながらクスクス笑っている。ちくしょー、まさかこんな手に出やがるとは。おい、みんなよお前ら！ みせもんじゃねえぞ！
「なにしてんだいきなり！」
「こうでもしないと、お前むりやりみるだろ……」
「だ、だってよー、みたいじゃんそんなのは」
「だめだ。……人がいるから」
…………。
なんだよそれ。人がいなきゃいいわけ？
そのひとことで、俺もすっかり動揺してしまって、それ以上なにもいえず、最寄りの駅につくまで俺たちは、ふたりして押し黙っていた。
楽しい修学旅行ではあった。あったが、俺の語彙ではなんともいえない、不思議で複雑で、甘酸っぱい後味が残る三日間だった……。
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エス(プロフ) - あわさん» すごくうれしいですありがとうございます……！文だけでなく、grpn以外のキャラクター、オリキャラたちまでお褒めいただいてすごくありがたいです。私が書き出したかった青春の空気感が伝わったようで、すごくうれしいです。ありがとうございます！ (2019年10月31日 20時) (
レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - 腐女神だぜ☆さん» うれしいご感想ありがとうございます！書きたいものを書きたいように書いた作品でそういっていただけるのはなによりの励みです！読んでくださってありがとうございました！ (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - スラカさん» ご感想ありがとうございます！！書き手の私の「grpnかわいい〜」という気持ちがあまさず伝わったようでうれしいです笑 読んでいただいてありがとうございます！ (2019年10月31日 20時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - るーかさん» ご感想ありがとうございます！そうですね、そういうことへのきっかけにもなれていたらこれ以上はないです！同性愛のテーマも案外普遍的で、どこにでもあるんだよということが伝わっていたらうれしいです。ありがとうございます！ (2019年10月31日 19時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - 倉の中の石さん» すごくありがたいご感想ありがとうございます！その気持ちが一回ぶん以上の評価として私の胸に届きました……！ありがとうございます！のたうちまわらせることができて狙い通りって感じです……（へへ…）ありがとうございます！ (2019年10月31日 19時) (レス) id: 59009a1e5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エス | 作成日時：2019年10月21日 23時
