第106話 Taiyakikun ページ10
*
エマの遺骨は佐野家の墓に埋められ、一通り葬儀が終わってから数日が経った。妹のいない生活はまだ慣れないが、周りに心配されながらもなんとか日々を過ごしている。
ぼちぼちエマの遺品整理を進めていたそんなある日。
万「Aー、付き合ってー」
貴「えぇ…今忙しいんだけど…」
万「いいじゃん、息抜き行こーよ」
貴「……しょうがないなぁ」
遺品整理をしている手を一旦休め、万次郎について行く。
しょうがないと言いつつも実際エマの遺品を見ていると何かと思い出して気が沈んでいた部分もあったので、正直息抜きするにはちょうど良かった。
こういう時はアレが1番だと真一郎も言っていた。
万「ほい」
貴「ありがと」
投げ渡されるヘルメットを被り、バブに跨る。
季節はまだ冬で肌に触れる風は冷たい。子供体温である兄の背中に引かれるようにぴったりとくっつく。耳を当てれば安心する鼓動が聞こえた。
万「寒ィ？」
貴「万次郎ぬくいから平気」
万「ならいーけど」
素っ気ない返事とは裏腹にバイクのスピードは先程より落ちている。
冷たい風の勢いが弱まった。
兄の気遣いに心も温かくなった。
数十分後着いたのは工業地帯に囲まれた港。
2人で堤防の上に座り、潮風をあびる。
何も話さずただ水平線を眺めていた。
万「……ここでイザナと会った」
貴「え、いつ？」
万「抗争の前に…
たいやき君の話した」
貴「ははっ、なにそれ」
突拍子のない話題に自然と笑いがこぼれた。
何故兄たちがたいやき君の話をしたのかも気になるが、言葉は思いや気持ちを伝える為にあるもので万次郎はそれを実行するのが少し人より苦手だ。
そして私は言葉の裏に隠された思いを汲み取るのが幼い頃から得意だった。
貴「…たいやき君って最後どうなるか知ってる？」
万「それイザナにも聞かれたけど忘れた」
貴「釣られて食べられちゃうんだよ」
万「ふーん
折角海に逃げたのにつまんねぇの」
興味無さげに万次郎は言う。
どこか遠くを見ている瞳には長いまつ毛の影が落ちている。その瞳に何を映しているのだろう。
貴「けどね海の中は初めて見るものばかりで
毎日楽しかったんだって」
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てる。 - 初コメ失礼しました！最初は恋愛系かな？？と思っていて読んでいたらバリバリの感動系で深夜に声を上げて泣いてしまいました(T ^ T) (2023年4月11日 0時) (
レス) @page3 id: 01aa01ae14 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 更新楽しみに待ってます。泣 (2022年11月20日 22時) (レス) @page31 id: e007552609 (このIDを非表示/違反報告)
はむはむ(プロフ) - 更新楽しみにしております。 (2022年11月16日 12時) (レス) @page31 id: 9534e4617e (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐 - この小説大好きですっ！！もうめちゃくちゃ感動できます！！更新楽しみにしてまーす！ (2022年5月25日 19時) (レス) @page31 id: 8d5c2ab10a (このIDを非表示/違反報告)
no_(プロフ) - この作品がとても大好きです。更新されるまで待ってます。 (2022年5月15日 17時) (レス) id: c80cd65ba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あたた | 作成日時：2021年9月25日 18時
