善逸とガチ恋したいヤツちょっと来い【鬼滅の刃】

△29 きみのためならしねる ページ30

「ぎゆ、さん。
わたし、が、ひと、を、食ったりし、たら、どうな、んの？」


「一門そろって腹を切る」


「ヒイッ！！！！」


相変わらずブラック過ぎだろ。

その黒光りしそうなまでの漆黒には戦慄するぜ。


「俺は絶ッッッッ対に嫌だ！！！」


獪岳がこれ以上ないくらいハッキリ拒絶した。


「なんで俺がお前のために腹切んないといけねえんだよ！！！出てけ出てけ！！！」


うーん。わたしだって女の子なんだからね。


「……ウガアッ」


「うわあああ！！！」


ばたばたと廊下を走り去る獪岳に笑ってると、
「調子はどうだ」
と、きわめて冷静な義勇さんがたずねてくる。


「あ……なん、か、ずいぶん、おちつ、いて、きまし、た。爪、も歯も、みじかく、なって、きた、し」


「そうか」


「ありがと、義勇、さん」


義勇さんはうなずいた。クールいけめん。


そのあと、
「訪ねてくれたことに感謝する」
と、じいちゃんが頭をさげて、玄関まで送りに行った。



畳の間に残されたのは、わたしと、お茶菓子を片づける善逸のふたりきり。



善逸は義勇さんの話を聞いている間、ひとことも喋らないで、かわいい笑みをくずさないで、ただ、うなずいていた。


何を考えているのかサッパリわからなかった。


ふだんは思ってること全部口に出して泣きわめくようなお喋りさんの、あの善逸が、だ。


「……善逸」


「んー」


「わたしのために腹を切れる？」


わたしのためにしねる？


「切れるよ、もちろん」


しねるよ。


きみのためならしねる。



「笑いながら切ってやる」


そう、笑って言うと、お盆をかかえて、パタンとふすまを閉めた。

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