【刀剣乱舞】短編詰め (ページ10)

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似た者同士な話2(安さに) ページ10

「安定」

甘さが混じった優しい声が好き。

「あ！安定だ！」

僕を見つけると駆け寄ってくる無邪気さが可愛い。

「…ひっ、ぅ」

いつの日か見てしまった、声を押し殺して泣く姿も。

全部、好きだ。

人の身を得た時、こんな感情があるなんて知らなくて、この感情に振り回された結果、彼女は僕を避けるようになった。
彼女が僕を避けるようになった原因…というか大元の出来事はわかってる。僕が彼女を"主"と呼ばないことだろう。
主、という呼び方はどうしても沖田くんの存在がちらついて、今代の主のことを主とは呼べなかった。彼女を主と認めてないというわけじゃない。人の身を得た僕ら刀剣男士を鍛え、直し、指揮するのは彼女だ。戦に関わりのない時代に生まれたのに主としてよくやっていると思う。なんて、彼女を主と呼べない僕に言う資格はないと思うけれど。

いつの日か、彼女を主と呼べる時が来たのなら。

それは、僕が沖田くんを忘れられた日だろう。

僕にとって沖田くんはあまりに大きな存在で、きっと彼の死を乗り越えることは出来なくて。そうなれば、忘れたふりをするしかない。思い出に、するしかない。
箱に蓋をして、時折取り出し、眺めて、また戻して鍵をかける。そんな思い出に。

今代の主へ、臆病者でごめん。でも、それでも。いつの日か強くなれた日には。

君を主と呼ばせて、想いを伝えさせて。