【刀剣乱舞】短編詰め (ページ23)

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願いの話ページ23

願いの話

ひらり。

様々な色の紙が視界の中で揺れる。
空に届けと言わんばかりに伸びている大きく長い笹は、本丸の力自慢達によってしっかり柱に結び付けられ、風に吹かれても葉が音を立てて揺れるだけだ。

あのピンク色の紙は乱、「可愛い物がいっぱい手に入りますように！」

うんうん、一緒に買い物でも行こうか。

あの黄色の紙は髭切、「弟丸が長期遠征中寂しがりませんように」

明日から長期遠征だからか。お兄さんらしいじゃん。

あの緑色の紙は膝丸、「兄者が名前を覚えてくれますように」

残念だけど、その願いは叶わないかもしれない。

あの青色の紙は数珠丸、「祈りを捧げます。」

それは…願い事では無いね…。

様々な色、様々な願い事がある。
一枚一枚見ていくと胸が暖かくなるのがわかる。気温は暑いが、不快ではない。心地いい暖かさ。

そうして、上から下まで眺めた所で足元の箱が目に入ってくる。
短冊が入っていた、どうやら最後の一枚のようである。色は、笹に飾られている短冊の中で一枚もない白色だった。
信濃の筆跡の付箋が貼られている。

"大将の分！"

どうやら私の分らしい。まさか自分の分もあるとは。
紙とペンを手に願い事を考える。さて、どうしたものか。
七夕では芸事の上達を祈るといいらしい。字が上手になりますように、勉強が出来るようになりますように…etc、と言った具合だ。
頭を捻る。これと言って願いたいことも、上達したいと思うことも無い。ならば普通の願い事を書こうかと思考を切りかえた。

「あーるじ、短冊書いてるの？」

「加州」

加州が後ろから歩いてきた。風呂上がりだろうか。少し上気した顔を団扇で扇いでいる。もう片方の手には赤色の短冊が収まっていた。何を願ったのだろう。

「加州は何を願ったの？」

「気になる？恥ずかしいから見せたくないんだけど…」

「大丈夫、今見せなくても後で見るから」

「うわー…良くないってそういうの」

「うわーって、酷いなぁ、書いて飾ってある以上見られても困らない内容書いてよね」

見られて困るわけじゃ無いけどさ、と小さく呟いた加州は、呆れた顔で短冊を裏返して差し出してきた。
くるっと短冊を裏返し、私と似た字を目で追う。

"主の願い事が叶いますように"

頭で意味を認識した瞬間、勢いよく顔を上げる。加州の顔は相変わらず上気している。
視線が、交わった。

「ね、あんたの願い事はなに？」

生ぬるい手が私の手首を捕える。

私の、願い事は。