midnight ページ14
太陽が沈み、黒に染まった空の下。
子どもたちが寝静まった頃に、大人たちは秘密の話をする。
いつものように夕食後、Aの宿題をみて一緒にテレビをみて、そろそろ就寝するように言われお互い自室のベッドに入った。
「‥‥んー」
起きたのは偶然だ。
トイレだけなら２階で済む。けれど、俺は喉が渇いていた。なにか飲んで寝ようと階段に足を置いて、リビングから明かりが漏れていることに気がついた。
時計は見なかったが、深夜だったと思う。お父さんかお母さん、まだ起きてるんやな。意味もなく音を立てずそっと階段をおりて、リビングの扉の前に立つ。
木の戸にはめ込まれたガラスの向こう、晩酌をする両親が見えた。
「ほんとうに‥‥」
「ああ、大丈夫や。鬱もAも仲良うやっとるし、これからも上手くいく」
「そうよね‥‥本当に、欝くんには感謝しているの。あの子‥‥Aは昔から人見知りで、引っ込み思案っていうか、なかなか友達も出来なくって‥‥それでよくあの人に私が叩かれてたの‥‥でも、鬱くんが色々声かけてくれたり、気にかけてくれるからあんなに明るくなって‥‥」
嬉しいわ、本当に幸せよ、とお母さんは涙声で言ってお父さんにもたれ掛かった。俺は。
「(なにを、言うてんねん)」
俺があの子を気にかけたのは、あの子をあんたが叩いたからだ。あの子が人見知りで、引っ込み思案なのは、傍にいたあんたたちをいつも窺っていたからだろう。
全ては知らない。けれどAを非難するような言い方が酷く引っかかる。俺の力じゃない。あの子が必死に。必死になってあんたのために。
そうしないと、いつ叩かれるかわからなかったんだから。
「(Aのせいにするな)」
体の奥底から、怒りが沸いた。そのまま頭のてっぺんまで回って、俺を黒く染める。このドアを蹴り破って、むちゃくちゃに壊してしまいたかった。
けれど。
「‥‥」
そっとリビングから離れる。自室に戻りベッドに潜り込んで、必死に怒りを沈めた。掛け布団を噛んでまで、叫びだしたい気持ちをこらえた。
けれど、それをしたら壊してしまうんだ。
Aがそこまでして守りたかった、”仲良しで幸せな家族”を。
やっぱり俺だけや。Aを守れるのも、Aの幸せを願っているのも。
「A‥‥」
だから、A。
俺もお前だけを想うと誓うから、お前も、俺だけを。と。誓って。
重い黒満ちる部屋のなか、もうすぐ俺は中学生、Aは４年生になろうとしていた。
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千歳(プロフ) - めぅか。さん» 初めまして！はい、全くもって無関係です。そちらを意識した訳では無くこの単語の意味合いを持たせたお話のため付けられたタイトルです。ご理解賜りますようお願い申し上げます。最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2020年4月9日 21時) (
レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - ゆうかさん» 私もしんどい思いをしながら書いておりました…自分で書いておいて「救いはないんですか！！」って感じです…一緒に見守ってくださりありがとうございました！私もrbrさんすごく好青年に書けたな…としたり顔してます！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - まもやろたおさん» ありがとうございます・・なんとか完結に漕ぎ着けました・・・！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
めぅか。 - あの、これのタイトルってま/ふ/ま/ふ/様の曲と同じではありませんか？不快な思いをされる方もいらっしゃるのでは無いでしょうか？作者様はそういうつもりがないのは重々承知しておりますが一応言わせていただいときます。作品としてはとっっっっても好きです！ (2020年4月8日 22時) (レス) id: aacdd32f14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - しんどい……(；；)こういう自己犠牲だったり屑だったりするお話好きなので、辛いけど最高でした……登場人物の感情がまっすぐに伝わってきて、凄く感情移入出来ました。すごい……完結おめでとうございます、お疲れ様でした！！(個人的にはrbrさんが凄い好きでした) (2020年3月30日 19時) (レス) id: 8749d17fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2019年9月30日 0時
