ヤンデレ一松続編 (ページ36)

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第86松ページ36

no side

「うん、どうしたの？」

「あ…えぇと…」

彼は目線を泳がせながら、若干顔を俯かせる。

しばらくの間、小さく唸っていたがとうとう彼も決心をしたのか、改めて彼女の方を向く。

「…ご、ごめんなさい…その…色々として…」

「……一松…」

彼女は、少し目を見開いた。

彼の謝罪の後はまた静寂が訪れ、静けさを増す。

時計の秒針の音が大きく聞こえる。

「…そ、その…許してくれる自信は無いんだけど…本当に悪いことをしたと思ってる。…大切な彼女なのに…見捨てられたかと思ってAに嫌な気分させて…」

彼の瞳からは涙が零れる。

涙声で声が時々裏返ってしまうが、彼は鼻水をすすりながら淡々と続ける。

「僕、怖かった…Aに捨てられたかと思った。だってこんな…クズでゴミな僕を彼氏にしてくれるなんて…普通有り得ない事だし…だからもう僕に…飽きたのかなって思った…」

「…一松…」

「本当に怖かった…捨てられたら僕、生きていけないって思って…どうしてもAを振り向かせたくて……僕は…ただ、Aに愛されたかった…」

彼は一通り話すと、また俯いた。

彼女は、彼の今まで隠していた思いを聞けて嬉しかったのか彼女はクスッと笑った。

「私が一松を捨てるわけ無い……でも、そういう思いをさせていたなんて知らなかった。大切な人の思いにも気付けなくて、ごめんなさい…」

笑ったかと思うと、彼女は真剣な眼差しで彼に頭を下げた。

それを見た彼は驚いて、鼻ですすっていた鼻水をダラーンと下に垂らす。

「へ…？」

「一松…鼻水垂れてる…あ、えぇと。もし良かったらだけど、こんな私で良かったらこれからもお付き合いしてくれませんか？」

彼女はふわりと笑みを浮かべる。

彼はまるで時が止まったかのように、その場で硬直した。

時計の秒針はカチカチと音を立てながら２人の時を刻んでいく。

「…も、勿論！」

「…え？」

「俺もAが大好き…！これからも一緒がいい…！離れたくない！」

「…！」

静寂が消え、瞬間幸せが訪れたような気がした。

まるで固くて解けなかったリボンがスルスルと解けていったかのような感覚だ。

そして彼は、彼女に言った。

．

「これからも、僕と一緒にいて…下さい」

「…勿論！」