第83松(バッドエンド) ページ33
***
「もう、これ以上誰もタヒなせない!」
そう言い、彼女は日記に起きた出来事を全て覆そうと鉛筆を強く握る。
桃色の彼が見つけてくれた鉛筆を、奪わせないと彼女は強く強く握る。
しかし、狂気の色に染まった彼は突然持っていたナイフを床に放り投げた。
ナイフは金属特有の音を立てながら床で眠りについた。
「…え?い、一松?」
「…ごめんね、A。僕が…僕がこんな事したから皆はタヒんじゃったんだよね…僕が…僕が…」
先程まで威勢の良かった彼は突然、その場で涙を零した。
彼女も突然の事で混乱し、鉛筆を強く持つ手が少し緩まった。
「ど、どうしたの?急に…」
「よく考えてみれば、こんなんで僕らが幸せになんかなれるわけ…ないよな。だって人を殺めた奴なんかと…Aは幸せになりたくないよね。あはは…冷静になって考えてみたら、こんなの誰にでも分かる事だよ…」
「そ、そんなことないよ。確かに兄弟には手を掛けたけど、今からでも遅くない。この日記で、もう一度取り戻そうよ、一松」
「……もしかして、許して…くれる…の?」
彼は、涙でグシャグシャになった顔を見上げ彼女を見つめた。
彼女は「うん、またやり直そう」と純粋な笑みを浮かべ、彼に手を差し伸べた。
すると彼は笑顔になり、「ありがとう」と言った。
「一松、また一からやり直そうね」
「うん。また…一から」
2人は笑顔で抱き合った。
嗚呼、これで“真のエンディング”ならば素敵な喜劇だったのに、と思った。
一度回り出した運命の歯車というものは、そう簡単には止まらないものなのだった。
「また、アノセカイで2人で一からやり直そうね」
「っ!!?があぁぁっ!!」
彼女は突然床に倒れ込んだ。
目に宿っていた光は消え、瞳孔も無くなり狂気の色を歪ませながら朽ちていった。
なんということだろう、これが真のエンディングでは無かったというのか。
「安心して、A。僕も今そっちに行くから。そしたら…またやり直そうね?ヒヒッ…」
そう言い、彼は彼女に刺さっていた血まみれのナイフを抜き、今度は自分の心臓にへと刺した。
ナイフが身体の中に入り、痛くて堪らない筈なのに彼は笑顔でその場に崩れた。
なんとも、悲劇的な
「イツマデモ、アイシテルヨ、A…」
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ふじいろ - 良すぎて涙出てきた完結おめでとう (2021年4月2日 18時) (レス) id: b0ac4dc4e8 (このIDを非表示/違反報告)
天城 美依(プロフ) - レミリアさん» ありがとうございます!! (2018年3月26日 11時) (レス) id: 6a5ae3df9e (このIDを非表示/違反報告)
レミリア(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2018年3月26日 11時) (レス) id: 3f2839ebb0 (このIDを非表示/違反報告)
天城 美依(プロフ) - 殺松さん» 教えて下さりありがとうございます!今初めて気がつきました(苦笑)ありがとうございます! (2018年1月29日 18時) (レス) id: 6a5ae3df9e (このIDを非表示/違反報告)
殺松(プロフ) - あの、バットエンドの最後のセリフが「アイテル」になってますよ! (2018年1月29日 16時) (レス) id: 79a3e216e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天城 美依 | 作成日時:2017年12月5日 23時