六師外道・fkr ページ8
「カーストってなに?」
「生まれた時から自分のランクが決まってるってことだよ。職業も結婚相手も何もかもに制限をかけられるんだ」
「ウチ知ってるよ、ナンギってヤツっしょ」
「間違っては無い…かな」
倫理はイスラムから中国思想を範囲とする、来月中旬の定期テスト。まだまだ早いけれど、特に損することもないかなと緑のマーカー片手に資料集を広げていたらやってきたのはクラスメイトのギャル系女の子だ。俺の嫌いなタイプの女子だから、名前は知らない。ド派手なアクセ付きのリュックを手に持っているから今から帰るのかなと思えば、俺の席の前の椅子を引いて黒板に背を向ける。明らかに長話をする姿勢だ。
内心面倒だなと思った。彼女と学校生活でそこまでの絡みは無い。放課後の教室に女子と二人きりでいることを目撃されることによる事後処理の面倒さと、特に恋愛感情を抱いていない目の前の彼女との距離の短縮。どっちを選ぶかと言われたら前者が圧倒的に多いだろう。
「で?このパリアはなんの人?コイツだけランク外にいるじゃん」
「パリアは…まあ、ギークみたいな」
「ギーク?」
「俺みたいなオタクってことだよ。ずっとパズルやってたり、クイズやってたりして協調性の無い人のこと」
軽く巻いて茶色に染められた髪の毛とジャラジャラ音を立てる鞄。明らかにカースト上位、陽キャの一軍だ。はっきり言ってこの手の人間で俺と趣味の合うやつは居なかった。
そんな少しの皮肉を込めた言葉をバカな女は理解できないようで、ケロリとした顔で流される。ただの趣味だとでも言うふうにノーリアクションだから余計にこっちが面食らってしまった。
「マジ?じゃあヴァイシャじゃん!手工業者だし」
「ヴァイシャは知ってるのね」
「つかアンタ、マジで頭良いんだね。何言ってるか何も分かんなかったもん」
まあお前よりかはな。それくらいの自信はある。
苦笑を飲み込んで帰り道で手を振れば無邪気に振り返すもんだから、すっかり毒気を抜かれた。
この日から、校内で唐突にギャルに話しかけられるパズルオタクとかいう同人誌みたいな学校生活がスタートした。しかも、会話の中身も大半は勉強の質問だ。でも、理性ある行動をしない事をプログラミングされてるとしか思えないくらいにふとした時にクイズを持ってくることもあったし、知恵の輪を脈絡もなく渡されることもあった。うーん、やっぱギャルって苦手かも。
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作者名:狭 | 作成日時:2021年9月10日 0時