Time goes by ４

無限大の明日。１ ページ8

Aside


「A、行くで」


いつになく強引な神山くんに手を引かれて、
青い鳥を後にする。

わけもわからないまんま。


扉を出たところで、
春奈さんと出会い頭にぶつかったけど、
　

神山くんの、


「警察行きたなかったら、消えろや」


その一言で、
春奈さん、青ざめて、
すごすごと引き下がっていった。


お店に入って来た途端の神山くん、
凄く焦った顔してて。


「間に合った！？」


「片桐って、そいつ、詐欺師やから！」


「お金！渡したらあかん！」


だーっと言われて、
最初、なかなか状況が飲み込めなかった。



何故か二人で全力疾走。


神山くん、

走るの早いから、
足がもつれそうだし、
息も切れ切れ。

通ってた美大の裏門で、
やっと立ち止まってくれた。

息を整える。

この沈黙だけでも、苦しい。


ぎゅっと握られたまんまの手首。

胸が痛くて、そっと振りほどく。


「ごめん、なんか焦ってて」


「ううん・・・」


「あいつ、投資とか自己開発系の詐欺集団の一員やねんて」


「どうして分かったの？」


「Aに話聞いてから、
念のためと思って。
調べとってん。
昨日まではっきりせえへんかったから。
なかなか止められへんかって、ごめん」


情けなくて、涙も出ない。


「私、バカだよね。
疑いもしなかった。
今の私に、
個展の話なんてあるわけないのに」


「巧妙な手口やから。
騙されんのもしゃあないって。
けど心配した」


「ごめんね。
神山くん、忙しいのに。
福岡にいたんでしょ？」


「うん。
東京に戻る途中で新幹線降りて来た。
電話やと伝われへん思って」


「ほんとにごめんなさい」


「ええって。
被害なかったんやし」


「ありがと。
本当にごめんね。
情けないよね。
いい大人なのに、
こんな簡単に引っかかって」


今の顔、見られたくない。

神山くんにだけは・・・


もう消えたい。


「そない落ち込まんでええって。
ようあることやもん。
俺も昔、
東京で騙されかけた事、
何遍もあるし」


神山くんが、
無理に明るく励まそうとしてくれるのが、
余計に辛い。

同情してるんだよね。


早く一人になりたい。

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