story16 ページ25
夢主side
……怠い。
今朝から感じている、この倦怠感はなんだろうか。
なぜか体が動かず、ソファーの上で寝そべるだけの自堕落人間になっている。
ぐぅ、とおなかの音が鳴ったのをきっかけに、ようやく立ち上がった。
キッチンに向かえばレトルトだったり、インスタント、冷凍食品ばかりが目に付く。
その中の一つを手にとって、台の上に置いた。
そのとき、インターホンの音が鳴る。
昨日からやけに人が来る。住所を教えているのはわずかな人だけ。
引っ越したばかりだから、宅急便が来るはずもない。
「……じゃあまた、そらるさん?」
いちいち外を確認するのも面倒で、誰が来たか確認もせずに扉を開けた。
目に入ったのは予想通り、とでも言うべきか、そらるさん。
そしてもう一人は。
「……へえ、来たんだ」
「もう、逃げるのはやめるって決めたがら」
……ずっと私から逃げてきた男。
「なに言ってるの? 今更、逃げるのをやめてなにになる? もうAはいないんだよ」
ここに来たそらるさんは、きっと全てを知っている。
すべてを調べる、そこまでは予想していたけれど、兄さんをここに連れてきたのには正直びっくりした。
兄さん、ようやく、向き合う気になった? Aの死に。
それならば兄さんは、私が知らないだけで随分成長したのかもしれない。
「今更向き合ったところで、Aが帰ってこないのはわかっている。だけど、もう逃げたくない」
兄さんはしっかりと私の顔を見ている。
それがなにを意味するのか、私は充分にわかっていた。
……もう兄さんは臆病者じゃない。
「ねえ、“もう逃げたくない”ってなにから? 私から? Aを殺した、自分の罪から?」
「…どっちも」
「それなら兄さん。やっぱりあんたは臆病なままだよ。私に許してもらえば、罪が消えるとでも?」
そういうと、兄さんは俯いた。
図星、そういうことなのだろう。
「なんで今更? Aは生き返ったりしない。あんたが殺した。あんたがいなければ、Aは生きてた」
畳みかけるようにそういうと、今まで黙っていたそらるさんが顔を上げた。
「……さっきから気になっていたんだけどさ、Aさん―――あ、この場合はにぃちゃん、の方がいいか。にぃちゃんは、まふになにをしてほしいの? 罪を償え、そう言っているけど、どうやって?」
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千々(プロフ) - くまくまちゃんさん» 最初のころの作品で語彙力ドバドバ崩壊なのにそういっていただけるなんて嬉しいです……! コメントありがとうございました! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
くまくまちゃん(プロフ) - すごいふかいなぁ。神かな?←面白かったです! (2020年9月19日 9時) (レス) id: 8a3f9ddf1c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» こちらにもコメントありがとうございますっっ! たくさんのコメントは本当にモチベに繋がるので嬉しいです……! 神作と思っていただけるのはRONONさんのネタが素晴らしいからですね、上手くネタを生かせたか心配ですけど、そう言っていただけて良かったです! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
ひきねこ - こんにちは 新しい方のから読みに来ましたよ なんですか!?作者様は神作しか書けないんですか!?コホン…凄く良かったです 他のも読みにいきます (2020年8月18日 19時) (レス) id: b9ac26b4ea (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» これからも読者さんの期待に応えられるように、誠心誠意頑張らせていただきます……! ありがとうございました! (2020年8月5日 15時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年5月10日 14時