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past2 ページ17

「お兄ちゃん!」



息を切らしてAが駆けてくる。

段ボールに詰められた荷物を自分の部屋に運んでいる最中だったというのに、どこに行っていたのだろうか。



「どこに行ってたの? まだ、Aの荷物運べてないんだよ?」



しかし怒ろうと思っても、僕がこんな言い方しかできない。

最近、ますますシスコンに拍車をかけているな、と思って苦笑した。



「あのね、私友だちができたんだよ!」

「ほんと!? 良かったね。同い年くらい? そしたら、同じ学校なんじゃない?」



にこにことしたAにつられて、僕も笑顔になる。

同じ学校ならば、Aの学校生活も心配する必要もないだろう。

そう思って訊いたのだが、Aは横に首を振った。



「ううん、その子は私と同じ年だけど、学校には行っていないんだって」

「学校に行ってない?」



Aと同じ年ならば、その子は小学四年生だ。

もちろん、義務教育の途中だろう。

……なら、不登校の子なのかな?



「その子、なんて名前?」

「わかんない!」



そう胸を張って答えたAに、あんぐりと口を開けてしまう。

友だちになったのならば、簡単な自己紹介くらいはすると思うのだが。



「でもね、また明日、同じ時間に同じ場所で会おうって約束したんだ!」



同じ年の子、Aがここまで楽しそうに話しているところを見ると、女の子だろう。

それなら、あまり心配する必要はないだろうか。



「あとねあとね、すごいの!」

「ん?」



Aはいつになく興奮した様子だ。

なにがあったのだろう。

この土地で初めての友達ができた、それだけにしては興奮しすぎている気が……。



「その子ね、私とおんなじ顔をしているんだよ!」

「えぇ?」



Aの言ったことが想像の斜め上を行き、思わず素っ頓狂な声を出してしまう。



「あー! さてはお兄ちゃん、私の言ったこと信じてないでしょ!」

「いや、信じていないってわけではないんだけど……」



この世には同じ顔をした人が三人いる。

そんなお話なら聞いたことがあるけれど、実際の所、まったく同じ顔の人なんていないだろう。僕はそう思っていた。



「いいもんね! 明日、お兄ちゃんもその子に会わせてあげる。そしたら私の言ったことが嘘じゃないってわかるんだから!」



Aの中で勝手にそう決められ、僕は明日、Aのそっくりさんに会うことになった。

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千々(プロフ) - くまくまちゃんさん» 最初のころの作品で語彙力ドバドバ崩壊なのにそういっていただけるなんて嬉しいです……! コメントありがとうございました! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
くまくまちゃん(プロフ) - すごいふかいなぁ。神かな?←面白かったです! (2020年9月19日 9時) (レス) id: 8a3f9ddf1c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» こちらにもコメントありがとうございますっっ! たくさんのコメントは本当にモチベに繋がるので嬉しいです……! 神作と思っていただけるのはRONONさんのネタが素晴らしいからですね、上手くネタを生かせたか心配ですけど、そう言っていただけて良かったです! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
ひきねこ - こんにちは 新しい方のから読みに来ましたよ なんですか!?作者様は神作しか書けないんですか!?コホン…凄く良かったです 他のも読みにいきます (2020年8月18日 19時) (レス) id: b9ac26b4ea (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» これからも読者さんの期待に応えられるように、誠心誠意頑張らせていただきます……! ありがとうございました! (2020年8月5日 15時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/  
作成日時:2020年5月10日 14時

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