【まふまふ】逃げんなよ。

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「お兄ちゃん！ 早く早く！」

「ちょっと待ってよA！」



僕らはとても幸せな家族だったと思う。

優しい両親に、明るく人を思いやれる妹。

特に妹であるAは、僕の誇りだった。



「今日からここが私たちの新しいおうち？ 友達、出来るかな？」

「Aは良い子だから、すぐに皆と仲良くなれるよ」



今日から新しい生活が始まる。

両親の仕事の都合により、今まで住んでいた場所を引き払い、引っ越したのだ。

もちろん、今までの友達と会えなくなる、ということもあり、Aは沈んだ顔をしていたが、すぐに元気を取り戻し、新しい生活に思いを馳せていた。



「Aは小学四年生だから……、ほら、あそこにある学校に通うらしいよ」



高台に見える、学校らしきものを指さす。

ちょうど今は春休みで、学校の始業式とともに転入できることになっているのだ。



「えー、でもお兄ちゃんはいないんでしょ？」

「あたりまえだよ、だって僕は中学生なんだから」



もちろん、誰も知っている人がいない所にAを送り出す、という不安はある。

けれど、Aはそんな僕の不安も打ち消してくれるような、明るくて優しい性格だった。



「やっぱりお兄ちゃんがいないと寂しいなぁ」

「こら、そんなわがままなこと言わないの」



少しだけ不安があるとすれば、あまりにも素直過ぎて、幼さを感じさせるところだろうか。

でも、僕の目には充分長所として映る。



「僕がいなくても大丈夫。Aは、相手が誰でもちゃんと仲良くできるでしょ？」

「うん！」



Aはとても良い子だ。

だからこそ、彼女と出会ったのかもしれない。

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