二人の“カタチ”【吉良ヒロト】

ヒロトのこと ページ9

部活が終わり家、っていうか、ヒロトの家に帰る。


そして広い部屋に入り、ベッドに倒れこむ。


『うーん、ヒロトの言ったことが分からない…』


じっくり考えてみるも、家族以外との会話経験がほとんどないせいでどうしても分かることができない。


『そのうち分かるかな』


サッカー部に入ったっちゃ入ったし、ヒロトのことを見てればいいなら見る。ヒロトは私のことを分かってくれる気がするから。


『ヒロトはなんでサッカー部で一人なんだろ…』


「俺がなんだって？」


後ろを向くと、ヒロトが扉を開けて立ってる。


『ヒロト！？なんでいるの？』


「俺が声かけても返事しないから入っただけだ」


気づかなかったな…。まずこの部屋の広さじゃ気づこうとも気づけない。


『あ、用は何？』


「Aのフットボールフロンティア出場、いいってさ」


『そっか。じゃあ頑張らないと！また教えてね！』


でもヒロトは浮かない顔。


「さっき何俺のこと言ってた？」


『あ、な、なんでもないよ？』


「嘘だろ、そんなの」


『ほ、ホントだから！』


「本当のこと言えよ？」


戸惑う私にヒロトは詰め寄る。壁際まで追い込まれて、身動きは取れない。


『うー分かったよ…』


しぶしぶ言う。怒らないかな…？


『どうしてヒロトは一人なんだろ、って。みんなヒロトのこと避けてるみたいだし…』


言うのが申し訳ない。悲しい言葉だから…。


「そんなことかよ。
Aにだけ教えてやる」


壁際から離れたヒロトはベッドに腰かける。


私はヒロトの隣に座った。


「俺のことなんて誰かに話したことない。Aだけにしか教えねえから」


その言葉が嬉しく思う。

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