二人の“カタチ”【吉良ヒロト】

約束を果たす ページ20

私は玲名ちゃんにパスを出した。けど、強さが足りず氷浦貴利名くんにとられちゃった。


パスを頑張らないとね。





明日人くんがリュウジくんを必殺技で抜いて、剛陣さんにパス。そしてそのまま1点が追加された。





ふとベンチを見て、私は涙が出そうになった。


『ヒ、ロト…』


来てくれたんだ…。


タツヤくんが、私が願ってたヒロトと一緒にするサッカーが、できる…。


そこでホイッスルが鳴った。見ると、雷門中ディフェンダーの岩戸高志くんがあたふたしてる。


晴矢くんが倒れてるから、ぶつかって負傷したんだ…。


私はすぐに晴矢くんのところに行った。


そのままベンチに。晴矢くんは脳震盪らしい。


「お前、出れたんだな」


一瞬体が跳ねた。


『ヒロト…！ありがとう』


来てくれたことが嬉しくて、どうしても笑顔になる。


『晴矢くんと交代？私ちょっとだけここにい…
わっ！』



晴矢くんの手当ての手伝いをしようとしたら、ヒロトに引っ張られた。


「お前は出るんだろ？手伝いなんかなくたってあいつは大丈夫だ。
見せてやる。俺のサッカーをな！」





ホイッスルが鳴って試合開始。ヒロトは早速パスをもらって上がる。


その動きは初心者の私には到底できないような、華麗な動きだった。


「ザ・エクスプロージョン！」


何回もボールを蹴って、のりかちゃんを破った。


『やったね、ヒロ…
いてっ！』


ヒロトのところに行こうとしたら、思いっきりこけた。


「何してんだよ…」


ヒロトは呆れ気味。でも、引っ張ってベンチまで連れてってくれた。こういうところが優しい。


「タツヤ、こいつ見てろ。すぐドジするから」


ヒロトの一言に少し困った表情をするタツヤくん。こんなこと言われたら困っちゃうよね…。


「A、まだ出たい？」


瞳子監督が聞いた。


『はい、できれば…』


「なら後半出すわ。それまで休んでて。論、交代よ」


武藤論くんと交代し、私は後半までベンチ。なんで転んじゃうの…。





タツヤくんは黙ってヒロトを見てる。私も、ヒロトを見るんだよ。約束したんだから。

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