秘密。２

１ ページ18

忠義Side


救急車で運ばれた、
清花のお父さんの息がかかった総合病院。


必死の形相で心配して付き添ってた俺の様子に、

看護師は、

Aの方を、俺の妻やて誤解した。



緊急手術を終えて、
隣り合わせのベッドに横たわった二人。


目を閉じたその顔は、
怖いぐらいによく似てる。


まさか二人が、姉妹やったなんて・・・


こんなに似てるのに、
俺は疑いもせんかった。


雰囲気も、服の趣味も、
性格も、何もかも違い過ぎて・・・


看護師は、俺の言うままに、


Aの名札に、
大倉清花と書いた。


廊下を走って来る足音。


清花の、いや、清花とA、
二人の父親が病室に駆け込んで来た。


「どうしてこんなことに・・・」


うなだれて、俺にとりすがる。


その手をそっと振りほどいて、
俺はAに自然を装って、寄り添った。


「姉妹二人でロッジに旅行に行く言うて、
３日前に出かけたんです。
こんなことになるなら、
行かせるんやなかった。
感情のもつれで、
姉妹喧嘩したらしいて・・・
残念ですけど、
お姉さんのAさんは、
もう目を開けることはないて、
お医者さんに聞きました。
僕にとっても大切な仕事仲間やったんで、
ほんまにショックを受けてます。
幸いなことに、
清花はあと数日で意識を取り戻すやろうということです」


Aの頬を撫でながら、
淀みなく出た嘘。

これで俺が、
Aを、清花やって思い込んでるって、
この父親に思わせる事が出来た。


「・・・忠義くん？」


義理の父親は、
最初、俺のことを愕然とした顔で見たくせに・・・


すぐに、うなづいて。


「Aには同じ姉妹だというのに、
不憫な思いをさせた上に、
こんな最期を迎えさせてしまった。
可哀想な事をした」


呆気ないほどあっさりと、
二人の娘を入れ替えた。


こいつは筋金入りの元祖クズ男や。


俺なんか、足元にも及ばへん。


非情やからこそ、
成功者として、
事業を拡大し続けられるねん。


「はい・・・
申し訳ないですが、
僕にとって大切なのは、
やはり妻の清花です。
清花が目を覚ましたら、
今まで以上に、二人幸せに、
暮らして生きたいと思ってます」


嘘を重ねるうちに、
それがほんまのように思えてくるから、

人間ていうんは、都合のええ生き物や。

２→←８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す