８ ページ17
清花に、
昔の自分の番号に電話をかけてみる。
繋がらないと思った機械の向こうから。
「もしもし？きょうちゃん？」
まぎれもない、清花の声が聞こえた。
「きょうちゃんは、そっちでしょう？
私はA。何言ってるの？」
恐怖に声が震えてる。
私がAなのに。
「何って・・・
私がA。
きょうちゃんのお姉ちゃんだよ。
何か悩みがあるなら聞くよ？
どうしたの？
また旦那さんが夜の相手してくれないの？
そろそろ二人目も欲しい頃よね」
清花は、かつての私とそっくりな口調で、
明るくそう続けた。
「だから、さっきから何を・・・
どうして帰って来ないの？
ここは、清花、あなたの家なのに。
私のこと、恨んでないの？」
問い詰めても、
「きょうちゃん、さっきから何を・・・」
清花が心底不思議そうな声を出す。
混乱して、頭がおかしくなりそう。
娘の結衣が、
怖い夢でも見たのか、
ぐずっている。
抱き上げた時・・・
「A。電話長過ぎ。
はよ戻って来いって」
はっきりと、電話の向こうから、
そんな声が聞こえた。
いつかと同じ、忠義の声。
「ごめんね。
清花。もう切るね」
清花のその声とともに、プツンと切れた電話。
結衣を抱いたまんまで、
床の上にすとんと腰が落ちた。
座り込んで、
泣きながら、笑う。
「はは・・・」
「何これ」
「何なの、一体・・・」
果物ナイフを手に、
車に乗り込む。
外は雨が降っていた。
忠義は、どこまでいっても、クズだ。
安定のクズ。
裏切らない。
立派なぐらいに、クズを極めてる。
知っていたはずなのに、
そんな忠義を、愛してたのに。
・・・どうしてこんなに悲しいの。
エンジンをかける。
目の前が霞むのは、
フロントガラスに叩きつける雨のせいなのか、
止まらない涙のせいなのか。
分からなかった。
本当の自分が誰なのか、さえ・・・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 486人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぁぃ岡ちゃん(プロフ) - うわぁうわぁ！！！ぞくぞくしました！ 割と感情移入しまくって読みながら泣いたりたまにセリフが口に出たりするくらいガチで感情移入するタイプの人間なんですけど(笑)、今回は自分がどっちなのか、今初めの主人公はどこなのか混乱して楽しかったです！！ (2018年11月11日 18時) (
レス) id: c2340028d5 (このIDを非表示/違反報告)
美穂(プロフ) - お久しぶりです。いつもとテイストが違ってゾクゾクしました。どっちがどっち?って思わず読み返しました。 (2018年10月21日 5時) (レス) id: 60a8e9ffa8 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - お返事有難うごさいました(/ω＼)私なりの主題歌ドンピシャですよね笑！君がためシリーズ私も大好きで大好きで…何度も読んでます☆ミスチルだったんだ〜！ミスチル大好きなので、もう最高すぎる♪秘密２スリリングでハラハラしました！発想力に脱帽です (2018年10月20日 6時) (レス) id: ac3afc1999 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - ゾクゾクしながら読みました！読み終わっても混乱していますが（笑）面白かったです。 (2018年10月19日 23時) (レス) id: 327514e65b (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - ヤス君、凄かった…(///∇///) アンケートで投票したくらい、この作品が好きで…普段の甘々な作品とのギャップがたまりません(≧▽≦) 素敵な作品、ありがとうございました♪ (2018年10月19日 16時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fool x他1人 | 作成日時：2018年10月3日 10時
