天使だった幼なじみがハイスペックイケメンになって私を迎えに来た。 (ページ36)

今日:90 hit、昨日:291 hit、合計:4,560,014 hit

○36○ ページ36

無機質なすれ違い。

○

『Aさん、用事があるって言って帰っちゃったよ。』

『なんか……様子が変だった、気がする』

緑谷からそう聞いて、可笑しいと思った。

だって、Aは律儀なやつだから。そういう時、謝りながら帰るか、帰ってから俺にすぐに謝罪のメールを寄越す。

そもそも、用事を忘れて俺の所まで来て、急に思い出して急いで帰る、というあいつを想像出来ない。

Aは俺と違ってしっかりしている。そんなこと10年も前から知っているし、今も変わっちゃいない。

「……電話、出ねえ」

これで二回目の電話。10コール以上鳴らし続けても出ない。

今までそんなこと、無かったのに。

「……… 何で」

三回目の電話も、無機質なコール音が鳴り響き続けていた。

・

「………電話……？」

帰宅して、ベッドの上でうとうとしていた私の耳に流れ込んで来た、着信音。

重い体を動かしてスマホを拾い上げるとそれは止まり、再び鳴り出した。

＿＿＿＿焦凍くん。

きっと、メールのひとつも入れない私を心配して電話を寄越してくれているのだろう。

彼の顔を思い出して、泣きそうになって慌てて頭を振り、彼を消す。

『迎えに来た』

『高校卒業したら結婚しよう』

『ありがとな』

『A？』

『ふ、おもしれえ顔』

『ぼく、オールマイトみたいなヒーローになってさ！』

『Aちゃんのことまもるから！』

『約束通り、迎えに来た』

違うんだ、焦凍くん。

ごめんなさい。

私は、君のそばに居る資格なんて無いんだ。