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〜時透視点〜
だから、忘れちゃいけない人なんじゃないかと思ってる。
平助 「…Aは幸せ者だよ。」
時透 「……違うんじゃないの。
二年後に死ぬかもしれないんでしょ?
むしろ可哀想だよ。不幸でしょそんなの。」
平助 「いいや。それも違うな。」
本当に平助の言ってることはわかりにくくて困る。
何が違うっていうの。
僕からしたら、Aは可哀想な人だよ。
平助 「お前があいつを守るんだろ?
そんなら未来は変わってんじゃん。」
時透 「…でも…。」
平助 「もしかして、守れないとでも言うのか?」
そんなわけない。
時透 「守るよ。」
平助 「だろ?
それにな時透。自分を本当に思ってくれている人がそばにいてくれるってのは、
本当に幸せなことなんだ。」
時透 「?」
平助 「お前がAを忘れなかったってことは、それだけ心に残って、
それだけ覚えていたかったってことだろ。
忘れたくても忘れられないくらいに、あいつのことを大切に思ってるってことだろ。」
そうなのかな。
でも僕は、覚えていたいだなんて思ってたわけじゃない。
いつものように忘れるだろうって思ってた。
無意識のうちにそう思ってたってこと?
平助 「そんなお前がそばにいて、命を賭けてまで守ろうとしてくれている。
俺は、物心つく前に死んじまったから、よく分かるんだよ。
父さんや母さんが、俺のために流してくれた涙も、墓の前でずっと謝ってくれるのも。
全部、俺は嬉しかったんだ。
もう一緒にいない人間なのに、ずっと忘れないでいてくれてるって思うと、すげぇ嬉しいんだ。
俺は誰よりも幸せだって思える。
…生きて隣にいることができなくて、すごく悔しい。」
平助は、涙を流しながら言った。
思われること、思うこと。
僕がAを幸せに出来てるってことなのかな?
平助 「まだ時透には分からないかもしれない。
でも、いつかきっと分かるから。自分を好いてくれる人を大切にしてほしい。
そして…
Aのことも。よろしくな。」
すると、平助は突然消えてしまった。
A「時透君!」
ちょうどAが走って迎えに来た。
よくここが分かったね。
A「探したよ。こんなとこまで来ちゃって。
もうとっくにご飯冷めてると思うよ。」
…怒ってる君も、愛おしく思えるのはなんで?
胸の奥が熱い。心臓がバクバクしてる。
A「帰ろう!」
時透 「…うん。」
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