転生先が乙女ゲームみたいなんだが 3【鬼滅の刃】

第佰伍話 ページ8

「どうぞ」




とりあえず天星さんを屋敷に招き入れ、お茶とお見舞いでもらった羊羹のうちの一つを机に置く。
そして私も天星さんの向かい側に座り、お茶を一口啜った。




「……それで、私が転生者かどうかでしたよね」
「……はい」
「お気づきの通り、私は転生者です」




意外とすんなりと、口にすることができた。
それは天星さんも転生者だと確信できたからか……はたまた、踏ん切りがついたからか。
どちらにせよ、ようやく言うことができた。




「私の前世は何の変哲もない女子高生でした。
記憶が戻ったのは…天星さんが柱になったあの日です」




もう、随分と昔なことのように感じる。
確かに長い時間が流れたけれど……あの日のことは忘れたくとも忘れられそうにない。
だってまさか、自分があの鬼滅の刃の世界に転生するなんて思ってもみなかったもん。




「……私は生まれた時から記憶がありました。
そして成長して、5歳くらい…だったと思います。
この世界は私がヒロインの世界だって気付きました」




……なんと自信満々な。

でもまぁ、間違ってはいないのかな。
ここが鬼滅の刃の原作とはまた別の…鬼滅の刃の二次創作とかの世界だったなら、私と天星さんという存在はイレギュラーではないし、天星さんがヒロインという事実もあながち間違ってはいない。




「ここは、私が前世で友達と書いていた夢小説の世界だったんです」
「………。」




……まさか、自分の書いた夢小説の世界に転生するなんて思ってもみなかっただろうな。
すぐにこの世界に順応してヒロインとして振る舞えたのは、作者故なのか。




「自分がヒロインだと知って嬉しかった。
私は前世の分まで誰かのために戦って、素敵な恋愛だって出来るって……思ってたんです」




なのに……そう呟くと、ギリッと歯を噛み締める。
手に握っていた湯呑みがパキッと嫌な音を立てていたのは気のせいだと信じたい。




「何もかも、上手くいかなかった……!!!」




目に涙を浮かべる天星さんと視線が交わる。
いつもの笑顔はどこへやら、苦痛に顔が歪む。
……私は初めて、本当の天星さんを見た気がした。

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