転生先が乙女ゲームみたいなんだが 2【鬼滅の刃】

第漆拾話 ページ22

「ぶっ…」




目の前の人物に思わず吹き出して笑う。
隣の天星さんも笑いを堪えながら肩を震わしている。

私達の目の前には女装した炭治郎と善逸と伊之助。
あの悲惨な化粧されて、元の魅力の欠片もない。

漫画で見た時もヤバいな、って思ったけど、実際に見ると格別。めちゃくちゃヤバい。




「……ほんとにこれで行くんですか」
「うーん、何というか…個性的？なお化粧ですね」




天星さんも言葉に悩んでおります。
個性的、って褒め方が見つからない時にもよく使われるよね。今回が良い例です。




「天星、野一色」




着替え終わった宇髄さんが部屋に入ってくる。

ほら、美形、めっちゃイケメン。
こんなのに美人だって言われても嫌味にしか聞こえないでしょ。




「…どうした、そんな見つめて。まさか…俺様に惚れたか？」
「あ、いえ、それは絶対にないんで」
「結構辛辣だよな、おまえ」




カッコいいし、イケメンだけども。
原作に関わりたくない私が原作キャラに惚れるなんて、ましてや柱に惚れるなんて、ないない。
全ての恋路は隣の夢主ちゃんに任せます。

ほら、今も"宇髄さんはカッコいいですよ！"って天使スマイルを浮かべながら言ってるしね。




「よっし、んじゃ行くか」
「え!?ちょ、本当にこのまま行くの!!?」




個性的な化粧を施された善逸が宇髄さんの言葉に瞬時に反応する。
まぁ…そういう反応に、なりますよね。




「安心しろ、お前たちは完璧だ」
「どこがだよ!!!」




宇髄さんに噛み付く善逸を炭治郎が必死に止める。
伊之助はお茶菓子を頬張ってるし、私と天星さんは苦笑いをこぼすことしかできない。




「……あれ、天星さん。髪、解けてますよ」
「え、…あ、本当だ」
「私でよければ直しますよ」




天星さんが嫌じゃなければだけど。
まぁ、ヒロインからしたら悪役にやられるなんて嫌だよね……と思っていたら、天星さんは髪を解いて髪紐を私に手渡した。

……それも、少し嬉しそうに。




「それじゃあ、お願いします」
「……はい」




え、何、これも何かのイベントだったりする？
実は私、もう既に嵌められてる？

なんて警戒しながら天星さんの髪を結ったけど、特に何も起こらなかった。
でも天星さんは何故か嬉しそうで……

正直、意味がわからなかった。


そして、私の心に不安ばかりを残しながら私たちは鬼の住まう遊郭へと足を踏み入れた。

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