転生先が乙女ゲームみたいなんだが 2【鬼滅の刃】

第陸拾話 ページ12

「よ、野一色」
「……何か御用ですか」




あれから4ヶ月。

羊羹を買いに行こうと屋敷を出れば、目の前には宇髄さん。後ろは先ほど閉めたばかりの戸。
つまりどこにも逃げ場がない。


野一色美華、大ピンチであります。


いや、この時期に宇髄さんが訪ねてくるとか嫌な予感しかしないんだけど……




「ちょーっと、手伝ってくんね？」
「…何を」
「いいからいいから」




…………。




「あ、おい!!!」




私は瞬時に地面を蹴り、逃げ出した。
そりゃもう、かつてないほどのスピードで。

あれから4ヶ月ですよ、4ヶ月。
わかります？？
そろそろ遊郭編が始まる時期なんですよ？？


原作になるべく関わりたくない私にとっては、宇髄さんとのエンカウントは恐怖でしかないんですよ。




「ったく、逃げるなよ…」
「っ……」




ま、あの宇髄さんから逃げられるはずもなく……
数秒後にあっさりと捕まりました。

くそ〜……っ。
でも、よくよく考えれば宇髄さんの話が遊郭の任務についての話だと決まったわけではない。
うんうん、用件くらい聞いてあげようではないか。

…って、地味にフラグが立った気がするぞ。




「…用件は？」
「実は次の任務で女の隊員が必要でな…」
「お断りします」




はい、フラグ回収です。




「おいおい、まだ最後まで言ってねーだろ」
「女の隊員が必要だから手伝ってほしい、って言うんでしょう？」
「さすが野一色、派手に冴えてるな」




いや、文脈から想像するのは容易いですって。


ほんとにやめてよ……。
せっかく無限列車編は回避できたのに……。

あ、また天星さんに行ってもらえばいいんじゃ!!?
……でも私が推薦したことを知られたら、また天星さんの親衛隊に目付けられそうだしなぁ。




「とにかく私は行きません。
女の隊員が必要なら他をあたってください」




私の腕を掴んだままの宇髄さんの手を振り払い、歩き出そうとするが、また行手を阻まれた。

まだ何か？
ため息をついて宇髄さんを見上げると……宇髄さんはニンマリと笑っていた。

思わずぶるっ、と悪寒がするほどに。




「そうもいかねぇな」
「……はい？」




すると、どこからかバサバサと音が聞こえてくる。
そしてその音の正体は宇髄さんの肩にとまった。

それは私の鎹鴉のくろで……




「ｶｧ！ｶｧ！音柱トノ合同任務！」




新たな任務を、私に告げる。
……まさか、お館様公認だなんて。




「つー事で」
「………はぁ」




この前みたいな言い訳文は思いつかない。
これは、完全に逃げ場を失った。

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