【リヴァイ】残酷で美しい世界に【進撃の巨人】 (ページ15)

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＃11 ページ15

「リヴァイ」

「なんだ」

エルヴィンに呼び出され、ついでに資料を渡していると、いつにも増した真剣な顔で話しかけられた。

「ジゼルと何かあったか？」

一瞬ギクリとする。
大きなことではないが、昔のことで少しあったのは事実だったからだ。
だが、もうあれから既に数日たっている。
本部内ですれ違うこともなく、あれ以来、一度もあの女の顔を見ていない。

「……いや。特に何もないが、あの女がどうかしたのか？」

「そうか……。特に普段と変わりはないように思うんだが。
……どうも変な感じがしてな。…たぶん、俺の思い違いだろう。気にしないでくれ」

「……あァ」

そのままエルヴィンの部屋を後にすると、どうにもあの女のことが気になったが、俺にどうすることもできないのは明白だろう。
結局、部屋に様子を見に行くこともせず、昼近くだったこともあり、食堂に食事をとりに行く。
明日に迫った壁外調査の事を考えると、少しの胸騒ぎを感じたが、それを隅に追いやった。

面倒なことは後で片づければいい。最も、あの女が生きて帰ればの話だが。

しかし、食事後も仕事をする気にもなれなかった俺は、本部を出て、気づけば、あの木の下へと足を向けていた。
あの夜もクソガキが来たように、今俺が行けば、そこにいる気がしたからなのか。

「………チッ、本当に居やがった。
……おい、クソガキ」

「あぁ、お久しぶりです。何かご用でしょうか？」

久々に見たクソガキはこの前と変わったところなど一つもなかった。
不愛想な顔も、生意気そうな猫かぶりの雰囲気も、何も変わっていない。
唯一変化があるとすれば、この前見たときよりも顔色が悪い、そんな気はした。

「エルヴィンの野郎がテメェの事心配していやがったぞ。
……お前、そんな顔で、壁外出れんのか」

「そうですか、まったく、変に過保護ですよねぇ、あの人も。
……大丈夫ですよ。余裕です。何でしたら、あなたの護衛につきましょうか」

「お前に護衛されるほど落ちぶれちゃいねぇ。
だが、そうだな。お前の実力を見てみたい気もするな」

「私の配置は、今日、エルヴィンから直接伝えられます。
……一緒になることはないでしょうけれど、一緒になることがあれば、よろしくお願いします」

「あぁ」

「では、私は、これから仕事の手伝いがあるので失礼します」

去っていくジゼルの後ろ姿は、今にも消えそうなほど、弱々しく、でも、しっかりとした足取りだった。