【テニスの王子様】遠回しな君の隣５【不二周助】完結 (ページ6)

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142話　報告ページ6

初春を運んでくる緩やかな風の中、卒業式はつつがなく挙行された。

卒業式には留学中の手塚先輩が参加し、見事に女子のハートを鷲掴みにする答辞を読み上げていた。
周りの女子は、卒業証書授与の時の男子テニス部３年生への嗚咽をかみころすのに必死で、唇をかみしめてタオルに顔をうずめている子もいて、若干引いた。

そんなこんなありつつ、無事に卒業式が終わり、11時も過ぎ、先輩たちがクラスで各々の別れを告げたころ、弓道部は改めて弓道場に集まっていた。

と言っても、３年生が集まって顧問の先生にお礼を言うだけだったのだが、なぜがそこに１，２年生が合流してしまい、結果的に部員全員が集合してしまった形だ。

３年生がそれぞれ顧問や部員の感謝を述べ、私たち後輩も全員でお礼と抱負を伝えた。

顧問は静かに頷きながらそれを聞いていて、いざ自分の番になると気恥ずかしそうに頭をかきながら、「お前たちは本当に誇りだ」なんていうものだから、堪えていた３年生の涙が決壊し、静かに終わることはできなかった。
それでも暗い空気にならないから、やっぱり私は部活が好きだ。この場所を大切にしていこうと改めて感じていた。

もう昼も過ぎているということで、そこで全員解散となった。
次々に弓道場を後にするみんなを見送り、顧問に「じゃあ鍵よろしく」と鍵を預けられ、ついに私と奏恵の２人きり。

奏「で？」

ぴったりと、顧問が後ろ手に引き戸を引いた瞬間、間髪入れず奏恵が問いかけた。

奏「どうなったって？」

朝練はなく、クラスも離れている私たちは、昨日以降、話すタイミングがなかった。しかし、卒業式が終わってわりとすぐ合流した後、いろいろな人につかまり、ほぼ奏恵の視界から私は離れていない。おまけに昨日までのように思い詰めていない様子を見れば、聞くまでもないとは思うのだが、ここでしっかり言葉にしろ、と問い詰めてくるのが奏恵らしい。

私はその場にゆっくりと胡坐をかき、両手で顔を覆いながら答えた。

貴「……付き合うことになりました」

奏「よくやった!!」

貴「うわっ」

奏恵が私にとびかかり、まるで大型犬にそうするかのように頭をぐしゃぐしゃとかき回す。そのまま２人で倒れこんで、大声で笑いながらじゃれ合った。