【テニスの王子様】遠回しな君の隣５【不二周助】完結 (ページ24)

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160話　進級ページ24

街の木々が暖かな色に染まり、そよぐ風に不意に寒さが混ざる頃、私はファーストフード店のテーブルに、頭を擦り付けて項垂れていた。

貴「もう嫌だ……」

口をついて出た言葉に、目の前に座る不二先輩がくすくすと小さく笑った。

不「ほら、あと少しだから頑張ろう」

そう言って右手の指で私のテキストを指さす。
そこには所狭しと母国語以外の言語、厳密に言うとアルファベットが羅列していた。

見ているだけで頭が痛くなる。

私は現実から目をそらすように、またテーブルに顔を伏せた。

不「ほら、進級がかかってるんだから、頑張って」

不二先輩の柔らかい、でもどこかからかいを含む声がする。

そう。進級がかかっているのだ。
呼び出しを受けたのは昨日の放課後。

中学3年生になった私は、夏休みまで日々部活の生活を謳歌していた。

そして夏。無事に引退を迎え、部活からの解放と同時に、習い事としての弓道漬けの日々が始まった。
世の中の中3は高校受験一色だが、私はどうせ内部進学。定期テストも何とかクリアしているし、バカでもまあ問題は無いだろう、と、高を括っていた。

結果、バカは問題大有りだったのだ。

貴「普通今言います？もっと早く言ってくれても良くないですか？」

不「あ、人のせいにしてる」

言外に、「違うよね」と言うニュアンスを滲ませながら、先輩が笑う。
それでも愚痴の止まらない私が「だって……」と言葉を継ぐと、先輩が遮るようにテキストを手に取った。

不「ほら、期末まで時間ないんだから起きて。次の文法、説明するよ」

貴「あと2週間あるし……」

不「って言いながら2年半経ってたんでしょ」

貴「……」

ぐうの音も出なかった。
観念して体を起こし、ペンを持ち直す。先輩の心地いい声音が耳朶に染みる。テスト勉強中、しかも英語でなければ最高だった。

分からない単語はその場で調べて訳していく。と言っても分からない単語だらけすぎて、文法を教えてもらうと言うよりは辞書を引く勉強みたいになっていたが。

次の期末で、全教科平均点を取らなければ進級は難しいと言われた。内部進学には２学期までの成績が反映されるため、次がラストチャンスなのだ。

問題となる教科は、英語、理科、数学の3教科。次の期末までは1ヶ月を切っている中で、どこまで詰め込み作業をやろうかと悩んでいるところに、不二先輩からの連絡があった。