46.疑問 ページ47
高専内に戻った後"医務室に居るように"と五条から念を押されて1時間ほど居座っている。
当の五条と言えば、今回の件を報告したり残りの任務に出向いている為暫くは帰って来ない。
報告書を始末することも許されず、医務室のベッドでただただ横になっているだけ。
静かな空気に耐えられず、体を起こして家入さんを呼ぶ。
『家入さん』
「硝子でいい。そっちの方がなんかしっくりくる」
『...硝子さん』
「ん」
『聞きたいことが、あるんですけど』
そう言うと、パソコンと向き合ってた硝子さんは"どうした?"と言いながら体を私へと向ける。
『...おかしくないですか、私』
「おかしいって?例えば?」
『今まで呪詛師だった私を、五条は何で引き入れたんだろうとか思いませんか』
「あー...」
硝子さんは何か察したように、体をパソコンへと戻し煙草を手に取る。
"ん"、と投げられた箱の中から煙草を1本貰い、口に咥えた。
「五条はさ、アンタと昔の自分を重ねてんだよ」
『それ捕まった時も本人から聞きましたけど、それだけで...』
「まぁ厳密にはそれだけじゃないんだけどさ」
カチカチと摩擦を起こそうとする音が聞こえる。
気づけば硝子さんの口から煙が吐き出され、空中に溶けていく。
「昔の五条はアンタみたいに人の話は聞かないし、自分が1番正しいと思うタイプ。
超厄介でしょ?おまけに口は悪いわ愛想はないわでホント生意気だったんだから」
『今はそうは見えないですよ』
「変わったんだよ、夏油が離反した日から」
"一人称は俺から僕に変わるし、雰囲気も刺々しい雰囲気から飄々とした掴みどころのない雰囲気に変わった"、と硝子さんは言う。
「つまりはさ、アンタに良い人生送って欲しいってことだよ。
大切な誰かの為に生きていられるって幸せを見つけて欲しいんだと思う」
少し考え込んだ後、"五条がそんな粋なことします?"と聞くと、硝子さんは"アイツならやりかねん、なんだかんだキザだし"、と言った。
火をつけた煙草は吸う気になれず、殆ど口をつけていない状態のまま灰皿に擦り付けた。
大切な誰かの為に生きられる幸せ。
私は家族に対して"愛情"を抱いて過ごしてきたはずだった。
でもそれは、五条にとっては違うと断言できるのだろう。
ならば一体。
『(...何が正解なんだ)』
答えは出ないまま、医務室のベッドに潜り込むといつの間にか眠りについていた。

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みやび(プロフ) - ゆりさん» ありがとうございます〜!是非続きもお楽しみください! (2月15日 10時) (レス) @page49 id: e66de82094 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 今回も最高でしたー!!!五条先生の恋の行方が気になります✨恋のライバルはいたりするのかな、とドキドキしてます💞更新ありがとうございます! (2月15日 10時) (レス) @page49 id: e24f01555d (このIDを非表示/違反報告)
みやび(プロフ) - ゆりさん» 楽しんでいただけて嬉しい限りです!続きもお楽しみください! (2月12日 19時) (レス) @page46 id: e66de82094 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 冷たい対応されちゃう夢主ちゃん見て胸が痛くなる涙そして助けた夢主ちゃんと助けに来てくれた五条先生にきゅん、!!更新ありがとうございます😭 (2月12日 17時) (レス) @page46 id: e24f01555d (このIDを非表示/違反報告)
みやび(プロフ) - とまとさん» ありがとございます!続きも是非お楽しみ下さい! (2月9日 16時) (レス) id: e66de82094 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやび | 作成日時:2025年2月6日 13時