着信履歴 (青)

休憩と収録　青side ページ36

収録日和の今日


久しぶりに昔つけてた指輪を嵌めて家を出る。

マネージャーの車に乗り込めば、何事もなく外の風景が変わる様子が10分ほど続く



沈黙を破ったのは局に着く直前の一言。


｢お昼のクロニクル、安田さんの好きそうなカフェでの収録なので張りきっていきましょう。｣


マネージャーは、俺のテンションのあげ方とタイミングが分かってんねやろな。


＊



マルガリータって店名のおしゃれなカフェで亮ちゃんと座る。



右手にあるテーブルではスタッフさんと店員さんが話してるとこやったけど、

マネージャーが言うように独特で好みの内装やった。



｢なぁ、章ちゃん、あの子さ、この前の公演におったことない？｣


亮ちゃんが言うのはさっきお冷やを運んでくれた、女性店員。



｢かもなぁ〜、直接聞いて見たらええやんか」


｢あほか、章ちゃん聞いてくれたらいいやん。」



人見知りと人前では絶対ヤスって呼ぶ亮の癖を3回堪能したところで
メニューの漆黒アイスに話題が移った。





｢Aちゃーん、ちょっと来てー！」


さっき丸っぽい人やなー。って話してた人の声


なんかより、気になったのは



｢Aちゃん……？｣


｢ヤス、どした？」


｢なんもない」



まさかなぁ。


でもな、その後挨拶してもらった時に気づいてしもてん。



だって、俺はAちゃんの声しか知らんかったからさ、

声だけ聞けば、見つけてしまうんよ。




＊


声をかけた。

俺の記憶が正しければ、ファンのはずやから。


でも、受け答えする彼女の顔にはなんとも言えん表情があって、


亮は｢緊張してたな」っていうけど、そんなんちゃう。



そこで気付いた。

なんで複雑な感情がわかってしまったんか。



俺と彼女が


同じ状況で、
同じことを考えて、
同じことに悩んでるからやって。




今日仕事が終わったら電話しよう。って


いつもの安心感ある声が聞きたかった。

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