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「じゃあお願いします」

「先生みたイ」

「……お手本が先生しかないからね」



果たして私が彼に教えることはあるのだろうか。古文漢文はほとんど構文や単語が頭に入ってるかどうかって話だし、現代文だってあれだけ巧みに話を繰り広げる人が苦手だとは思えないのだが。





「じゃあとりあえずこの前の模試の問題について議論したいんだけド」




議論て、と思いつつ逆先くんが広げた文章を覗き込む。



なるほど、つい先日の模試だ。ある程度は私でも覚えてるよ。ええ。





「論説文はやる気が削がれるから後デ、小説の方が得意じゃないんだけどネ」

「……やる気が削がれるとかはあるんだね」

「そりゃそうだヨ、ボクだって人間なんだかラ」




口調こそ当たり前のように言っているが、目が不思議な光を宿している。

目は口ほどに物を言う、というが彼にとってもそれは例外ではないようだ。目が語っていることが真実かどうかはともかく。





「あ、解答用紙もしよかったら見せて欲しいんだけど」

「いいヨ」




なるほど確かに減点幅が大きい。それでもバツがついていないのは流石だ。





「……小説って心情を読み取るみたいな所があって嫌いな人にはとことん嫌われると思うんだけど、根拠がない訳じゃない」


「……ほう」

「例えば前後の文章。情景描写。そういうところは分かりにくいけどヒントになっていることが多い」




逆先くんが何を喋っている訳でもない。必死に相槌をうってくれるわけでもない。それでもすらすら言葉が出てくるのは、彼の持つ雰囲気だろうか。

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作者名:涼風@睡眠不足 | 作成日時:2020年5月5日 9時

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