【文スト】幽霊花 (ページ10)

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4話ページ10

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此処は多種多様な玩具が所狭しと置かれている、まるで玩具箱のような摩訶不思議な空間。

「皆さんようこそ、アンの部屋へ」

突然日常から非日常に叩き落とされ、誰もが困惑と動揺で押し黙る中、此の部屋の主である少女が周囲に向かって話し始める。

「あらもう嫌だわこんな沢山の方達に見詰められて… 」

少女は初対面の人と話すのは苦手だと恥ずかしそうに顔に手を当てる。

「でも駄目ね、ちゃんと説明しなくちゃ
　皆さんきっとすっごくお困りだわ」

ベラベラと一方的に話し続ける少女に対し、谷崎は怒りを露わにしながら問う。

「ナオミは何処だ」

「あらご免なさいその説明が最初よね」

探偵社の皆さんはあちらよと奥の白い扉を指す。谷崎がその扉に駆け寄り小窓から中を確認すると、ナオミ、賢治、その他にも数人の人間が巨大な人形の手に囚われている。

「賢治君！ナオミ！」

谷崎は扉を開けようとドアノブに手を掛けるが、どれだけ強く捻ろうとも扉は開かなかった。

「鍵なしでは開かないわ開くのはあっち」

「外の景色が……静止してる」

少女は愉快そうに笑い乍ら、今度は反対側にある黒い扉を指差す。その扉に敦が駆け寄り外を確認すると、其処には先程迄いた市街地があった。然し、人も車も鳥も何もかもが静止していて、まるで時が止まっているようだった。

「あたしの名前はモンゴメリ
　此処はあたしの異能力で創った空間なの」

少女___ルーシーは黒い扉を指差し乍ら続ける。

「でも安心なさって
　そのドアから何時でも出られるわ…
　お仲間を取り返したくなければですけど」

「如何するお心算で？」

Aが少々挑発的な笑みで返すも、ルーシーは涼しい顔で続ける。

「簡単よ、此の部屋のアンと遊んで頂きたいの」

アン、いらっしゃいとルーシーが手を差し伸べると、何処からともなく巨大で禍々しい人形が現れる。

「アンは遊ぶのが大好きなの
　少し甘えん坊だけれど可愛いのよ」

巨大な人形、アンを背後に控えさせて残忍に微笑むルーシー。

敦達に巻き込まれた通行人達が突如現れたアンに恐怖し、悲鳴をあげる。そして、皆我先にと黒い扉に向かって逃げ出す。

「ただし、そのドアから出たら部屋の中のことは忘れちゃうわよ？よろしくて？」

そのルーシーの忠告に誰一人として耳を貸すことなく、通行人達は一目散に扉を目指す。

逃げ惑う人々の悲鳴と足音で可愛らしい部屋は騒然としていた。