6.羨ましいほど純粋な ページ6
「黒子っちと知り合いだったんスね」
「転校したけど、途中まで帝光だったからね」
ストバスから体育館までの最中、聞かれた質問に返した何気ない回答に勢い良くこちらを向いた黄瀬くん。何事かと顔を上がれば目に入ったのは、珍しく真っ赤に染まっている整った顔。
「あ、のさ...お姉ちゃんか妹いる...?」
「いや、いないけど」
そう言えばあからさまにガクンと項垂れたのを横目で見てふと考える。...黄瀬くん、お姉ちゃんのこと好きなのかな。でも、お姉ちゃんとならいつでも連絡取り合えるはずなのに、なんでそんな。
「誰か探してるの?」
いや、こんなことまで深入りする必要ないってば。何言ってんだろわたし!と、思わず口から出た言葉に自分で驚いた。すると、隣から盛大に咳き込む音が聞こえてきて、別な意味でびっくりする。この動揺っぷりったらない。漫画かよ。
「Aクンには関係ないじゃん」
子供のように口を膨らませる長身の高校生に、こいつ、モデルやってんだよな、と頭の隅でふと思って遠い目になる。それでも、サラサラの髪の毛の間から見える耳は真っ赤に染まっていて。
「その人のこと好きなんだ」
「いやぁ、ストバスで見つけたらAクン泣いてんだもん。びっくりしたっスよ」
「話をすり替えるな」
「痛い!」
意地悪っぽくそう言えば、さっきのわたしの恥ずかしい失態話に話題を変えてきた黄瀬くんの肩を精一杯つねる。痛そうにって言っても、多分そんなに痛くないと思うけど、顔を歪めたのを確認してからそっと手を離した。
黄瀬くんが好きな人いるってびっくりだけど、同時に相手が羨ましくなった。純粋にその人自身を好きになってもらえるって、なんて幸せなことなんだろう。きっと、世界も変わって見えるんだろうなと、柄にもなく乙女チックなことを考えてしまった。
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環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時