35.例外なんてない ページ35
「今日、Aちゃんの家に遊びに行ってもいい?」
「うん、もちろん!うちでなにして遊ぶ?」
「じゃあ、わたしね、さつきちゃんと仲良くなりたいから、わたしがそう言ってたよってさつきちゃんに言っといてよ。それで、三人で遊ぼう?」
あれ?
「この服なんかお似合いになると思いますよ」
「まぁ、可愛い。さつきに似合うわね。さつき、ピンクと白どっちがいい?」
「ピンク!」
「ねぇ、おかあさん。わたしもその服欲しい」
「え?」
「わたし、白がいい」
「やぁね、A。さつきの真似しないの。あのね、人にはそれぞれ似合う服があるのよ。お母さんたち、こっちで店員さんと服見てるから、向こうで欲しい服探してなさい」
あれ、まただ。
「先輩、おはようございます!」
「......うん」
「どうかしたんですか?」
「ねぇ、Aちゃんってさ、さつきちゃんと双子だったの?」
「はい。でも、それがどうかし...」
「ーーーじゃあ、俺のこと紹介しといてよ!お願い、さりげなくいい人って伝えといて!」
また、この展開だ。
なんで、わたしの交友関係にお姉ちゃんはいつも入ってくるんだろう。
スポットライトに照らされているお姉ちゃんの下にみんなが吸い寄せられるように集まっていくのをわたしはいつも指をくわえて見ていた。そして、気付くとわたしは一人、暗闇に取り残されている。
何度も自分の性格を変えようと努力したし、悪口なんて以ての外、人の嫌がることなんて絶対しなかった。お手伝いだって、掃除だって、挨拶だって誰よりも頑張った。
だけど、どう頑張って探しても、わたしの居場所なんて見つからなかった。折角作った居場所も、気付くとお姉ちゃんがわたしの代わりに、さも当たり前のような顔をして座っていた。
ーーー今回もわたしの居場所をとるの、お姉ちゃん。じゃあ、わたしは何処に居ればいい?何処まで遠くにいったら、放って置いてくれるの?
「危ないっ!」
無我夢中で走っていると、突然捕まれた腕。すぐ自分の脇を通り過ぎていく自転車。そして、視界に写り込んできた、透き通るような水色にどんどん現実に引き戻されていく。
「何してるんですか、Aさん。危ないですよ」
「......テツくん」
「何かあったんですか?」
「ううん、なにも...」
そう言い終わらないうちに、ギュッと握られた手に目頭が熱くなってくる。
「なにも、なにもない」
ーーーそう、自分にはもう何もない。
大粒の涙がポロリと瞳から零れ落ちた。
587人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時