19.聞いてない ページ19
「おい黄瀬。なんか奢れ」
「ぜってーやだ。てか、なんで普通に座ってんの?せっかくのAっちとのデートなのに空気読んでほしいっス」
「俺はマジバーガー三個な。あとコーラ」
「マジでなんなんスかあんた!!」
モデルらしからぬ顔をして大ちゃんに食ってかかる黄瀬くんを見て、こんな顔もするんだ、なんて得した気分になる。
「青峰っち、もっと詰めて。オレ座るから」
「...交換条件だ。マジバーガーとコーラとポテト買ってこい」
「増えてる!!」
それでも、どうしても買いたくないらしい。黄瀬くんが頭を横に振ってから、力ずくで大ちゃんの隣に座り込む。それから、隣りから聞こえてくる暴言の数々を見事にスルーして、涼しい顔で飲み物を飲み始めた。さすがだ。
しかし、その適応力の高さに感心するのも束の間。ボーッとしてるうちに、前方からするりと伸びてきた手がわたしの鞄からパンを奪ったのに気付いて、わたしはあっと声を上げた。
「大ちゃん!勝手に取るな!」
「いいじゃねぇか。腹減ってんだよ」
「今パン食べたら、おばさんが作ったご飯食べれなくなるでしょ」
「食えるっての。それにもし食えなかったとしてもお前が食うからいいだろ」
「食べないよ」
「食えよ。お前いつも夜中に台所でアイス食ってんじゃねーか」
黄瀬くんの前で言わないで、と両頬に手を当てながら心の中で叫ぶ。すると、大ちゃんの言葉を聞いた途端、顔色をサッと変えた黄瀬くんがカチャリとコップを置いた。カランカランと氷の音がこの静かな空間に響く。
「今、なんて言った?」
「え?」
「こいつ、夜中にアイス食べてんだよ」
大ちゃんの言葉に、黄瀬くんが目をつぶってゆっくりと深呼吸をする。
「ごめん、頭が整理できない。なんで青峰っちがそんなこと知ってるのかオレの頭じゃ理解できない」
「あ?何言ってんだ黄瀬。今年の春から俺んちに住んでんだよ、A」
その瞬間、クワッと目を見開いた黄瀬くんがわたしを見る。その迫力に圧倒されて、小さな声で「お世話になってます」と言えば、冗談きついぜと言わんばかりにフッと微笑んで小さく首を横に振った。それから、自分の頰を叩いたりつねったりし始める。それも、相当強い力で。
「黄瀬くん?どうしたーーー...」
そのせいで紅く染まっていく頰に焦りを感じて伸ばしたわたしの手を素早く掴んだ涙目の黄瀬くんは、驚いて目を見開いてるわたしに向かって叫んだ。
「ーーーそんなの聞いてないっス!!」
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環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時