16.嫌じゃない ページ16
驚くほど長い沈黙が訪れた。本人以外の三人が、じっと探るように黄瀬くんを見る。黄瀬くんは、さっきから、声を出すことを忘れたかのように、口を小さく開いたり閉じたりしていた。
「な、なに言ってんスか。Aクンは...」
「ーーー桃井A"チャン"」
かろうじて発したであろう言葉にかぶせて、言い放った灰崎くんの口から出てきた名前。その言葉を聞いた途端、黄瀬くんは何故かグッと息を呑んだ。
「お前の大好きなAチャン。もちろん覚えてるよなァ、あんなに探してたんだからよ。あー、でも。喜んでるとこ悪りィけど、」
「...ショーゴ君...!」
「ーーーAチャンはオレがもらう」
ーーー...え!?
それから、わたしの腕を強引に掴んだ灰崎くんは、無理矢理そのまま後頭部を引き寄せると、乱暴に唇を奪った。すぐさま目の前にある胸をドンドンと強く叩くが、ビクともしない。この状況下では、わたしの抵抗する力なんて虫ケラ以下だ。
「ショーゴ君!!」
「おいコラ灰崎!!なにしやがる!Aから離れろ!!」
青峰くんはわたしの腕を引っ張り、灰崎くんから引き離すと、そのまま胸ぐらを掴みながら向こうに行ってしまった。軽く手で突き飛ばされる形になったわたしは、そのまま黄瀬くんにキャッチされた。
「黄瀬くん、」
二人きりになって、なおさら気まずい雰囲気が流れる。顔を上げて名前を呼んでも黙ったままで、前髪で隠れた顔のせいで表情もわからない。怒ってるのかと思ったけど、口を強めにゴシゴシとこすってきた手は少し優しくて。
「本当に女の子なの?桃っちの妹の...?」
縋るように言われた言葉に、言い逃れは出来ないと、小さく頷いてから、押し寄せてくる自己嫌悪にギュッと目をつむった。
やっぱり、最初思った通りなのかな。黄瀬くんもお姉ちゃんのことがーーー。
「ーーーAっち」
しかし、わたしの予想とは反対の聞こえてきた予想外すぎる言葉に、おそるおそるだがそっと目を開く。そして、次の瞬間。目に映った黄瀬くんの表情に思わず釘付けになった。
「...わたしが女の子なの嫌じゃないの?」
わたしがそう問いかければ、真っ赤な顔をして頭を横に何度も振って、はにかんでみせる黄瀬くん。甘く疼く胸を隠すように、唇を巻き込んで下を向く。
それから「早くみんなのところ行こう」と小首を傾げながら言われた言葉に、わざとらしいくらいに大きく頷いた。
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環(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:環 | 作成日時:2015年2月15日 11時