検索窓
今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:332,845 hit

16.嫌じゃない ページ16

驚くほど長い沈黙が訪れた。本人以外の三人が、じっと探るように黄瀬くんを見る。黄瀬くんは、さっきから、声を出すことを忘れたかのように、口を小さく開いたり閉じたりしていた。

「な、なに言ってんスか。Aクンは...」
「ーーー桃井A"チャン"」

かろうじて発したであろう言葉にかぶせて、言い放った灰崎くんの口から出てきた名前。その言葉を聞いた途端、黄瀬くんは何故かグッと息を呑んだ。

「お前の大好きなAチャン。もちろん覚えてるよなァ、あんなに探してたんだからよ。あー、でも。喜んでるとこ悪りィけど、」
「...ショーゴ君...!」
「ーーーAチャンはオレがもらう」

ーーー...え!?

それから、わたしの腕を強引に掴んだ灰崎くんは、無理矢理そのまま後頭部を引き寄せると、乱暴に唇を奪った。すぐさま目の前にある胸をドンドンと強く叩くが、ビクともしない。この状況下では、わたしの抵抗する力なんて虫ケラ以下だ。

「ショーゴ君!!」
「おいコラ灰崎!!なにしやがる!Aから離れろ!!」

青峰くんはわたしの腕を引っ張り、灰崎くんから引き離すと、そのまま胸ぐらを掴みながら向こうに行ってしまった。軽く手で突き飛ばされる形になったわたしは、そのまま黄瀬くんにキャッチされた。

「黄瀬くん、」

二人きりになって、なおさら気まずい雰囲気が流れる。顔を上げて名前を呼んでも黙ったままで、前髪で隠れた顔のせいで表情もわからない。怒ってるのかと思ったけど、口を強めにゴシゴシとこすってきた手は少し優しくて。

「本当に女の子なの?桃っちの妹の...?」

縋るように言われた言葉に、言い逃れは出来ないと、小さく頷いてから、押し寄せてくる自己嫌悪にギュッと目をつむった。

やっぱり、最初思った通りなのかな。黄瀬くんもお姉ちゃんのことがーーー。

「ーーーAっち」

しかし、わたしの予想とは反対の聞こえてきた予想外すぎる言葉に、おそるおそるだがそっと目を開く。そして、次の瞬間。目に映った黄瀬くんの表情に思わず釘付けになった。

「...わたしが女の子なの嫌じゃないの?」

わたしがそう問いかければ、真っ赤な顔をして頭を横に何度も振って、はにかんでみせる黄瀬くん。甘く疼く胸を隠すように、唇を巻き込んで下を向く。

それから「早くみんなのところ行こう」と小首を傾げながら言われた言葉に、わざとらしいくらいに大きく頷いた。

17.二人きり→←15.不穏



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (449 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
587人がお気に入り
設定タグ:黒バス , 黄瀬涼太 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2015年2月15日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。