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29.先輩 ページ29

バレンタイン当日。個人的には嬉しいことに今日は休日で1日練習だ。それに、今日は三年生も来ていてなんだか懐かしい。

「よし、休憩!......って、今日は一段と凄いな、女子の数」
「なんか、黄瀬ってやっぱりすげぇんだな。改めて思うわ」

二年生の新キャプテンの掛け声とともに、体育館のギャラリーや入口から黄瀬くんに向けて声をかけ始めた女の子たち。その光景に部員のほとんどーーー森山先輩と早川先輩は悔しそうに顔を歪ませていたけどーーーが羨望の眼差しでエースを見つめた。わたしもその集団を見つめながら、あの中に黄瀬くんの本命がいたらどうしよう、と心の中で焦る気持ちを頑張って封じ込む。

「あの、休憩中すみません!今から、マネージャー全員からみなさんにバレンタインのチョコ配りますね」

そう言った二年生のマネージャーの数人が部員のみんなにチョコを配っている傍ら、ぼうっと部員を眺めているわたしたち一年生。早川先輩嬉しそうだなぁ、なんて思って少し微笑んでいると、ふいに叩かれた肩に驚いて顔を上げた。

「A、チョコ!」
「あ、森山先輩」
「俺にチョコくれるんだよな」

そういえばそうだった。期待を顔から滲ませた森山先輩に数日前の約束を思い出して、急いで鞄にチョコを取りに向かう。それにしても、わたしなんかから貰いたいなんて、先輩は少し変わっている。

「すみません。お菓子作れないんで、市販なんですけど」
「全然大丈夫!ありがとう、Aちゃん」
「いえ」
「因みにこれは本命かな」
「え?あ、いや...」

やっぱり違うのか、と。眉を八の字にしながらそう言った森山先輩に罪悪感を覚えて小さく頭を下げれば、何故か頭上からクスッという笑い声が聞こえて思わず目線を上げた。

「......森山先輩?」
「黄瀬にあげるんだろ、本命」
「ーーーなんでわかっ......あっ!」

思わず出た言葉に慌てて口に手を当てる。すると、切れ長の瞳をすうっと細めた先輩が静かにわたしの頭に手を伸ばしてきた。こんなに優しい表情ははじめて見るかもしれないと思った。

「A、チョコありがとうな」
「はい」
「...頑張れよ」

頭を撫でられて驚いているわたしに、優しい笑みを浮かべた先輩は小さな声でそう言うと、ゆっくりと部員のところに戻っていった。いつもとは違う森山先輩に、わたしはなんだかドギマギしてしまった。

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設定タグ:黒バス , 黄瀬涼太 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - たくっちさん» コメントありがとうございます〜!! そう言っていただけると嬉しいです! ほんとにありがとうございます!! (2015年12月29日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
たくっち - めっちゃ良い話じゃないですか。感動しました!これからも感動するような作品よろしくお願いします。応援してます! (2015年12月27日 18時) (レス) id: 14821b434b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 朱いメダカ@ペンタブ禁止令さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! ありがとうございます! (2015年5月12日 0時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
朱いメダカ@ペンタブ禁止令(プロフ) - 今日読み始めて一気に最後まで読んでしまいました!!凄くキュンキュンして泣けて…凄く面白かったです!! (2015年5月11日 23時) (レス) id: edbb06b586 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - にょんさん» コメントありがとうございます^ ^ ほんとですか!? すっごく嬉しいです、ありがとうございます!! (2015年5月7日 23時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2015年2月15日 11時

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