【黒バス】桃井さつきの妹じゃありません！

１１.懐いた犬 ページ11

「Aクン！一緒にお昼食べよ！」
「え、うん」

「合宿終わってから妙にAに懐いてんな、黄瀬のやつ」
「Aなんかやつれてるぞ、大丈夫か」

ーーー大丈夫ではない、決して。

心の中でツッコミを入れて、小さく息を吐く。黄瀬くんはわたしを男の子だと思ってるから、すごくスキンシップを取ってくるけど、忘れてもらっちゃ困る。わたしは女の子だ。

「オレ、Aクンのこと尊敬してるんスよ！」
「でも、"っち"って、変な呼び名つけねーんだな」
「Aっちって呼んでる人はもういるんス！被っちゃうじゃん」
「へー」

笠松先輩が興味深そうに頷く。...いや、呼び方なんて何でもいいから、とりあえず離して欲しい。

「ねぇ、Aクン！次スポドリ渡すとき、俺が一番ね！」
「...はいはい」
「てか本当小さいよね、Aクン。黒子っちより小さいっスよ。女の子みたい」

ーーーそりゃ女の子だからな。

何度目かになる無言のツッコミ。今回ばかりは隣で聞いていた笠松先輩と森山先輩が面白そうに微笑んでいた。

「...先輩。笑ってないで、助けてくれると嬉しいです」

さっきから、マスコットにするみたいに、後ろからギューッと抱きついてくる黄瀬くんにもう白目だ。こんなのいくら心臓があっても足りない。ドッドッドッと激しく脈打つ心臓の音がどうか聞こえてきませんように。

微笑むばかりで助ける気配のない先輩二人をジトーっと見ながら、心の中で呟いた。

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