交差点は空港内 ページ39
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こんなドラマみたいな展開、ありえるのか。
そのまま通りすぎれば良かったのに、さっき見た背中が、何故だか見覚えのある背中な気がして。振り返ったら、本当に見覚えのある人で。
彼が居る事実を呑み込めず、唖然としている間に、汗だくだった彼は声を張り上げていた。
「 ―――好きだ 」
何度も聞いてきた筈なのに、何度も自分で蔑ろにしてきたくせに。今だけは、どんな別れの言葉よりも、応援の言葉よりも、胸にじんわりと浸透してくる。
今ここで、私も好きだって言えたら。
今ここで、来てくれた喜びを表せたら。
今ここで、彼の元に走っていけたら。
「 なんで泣いてんの。そんなに、俺のこと嫌いだった？ 」
「 っちが、わたし、は 」
「 だから俺になにも言わず消えようとした？俺が社長だから今までずっと断れなかった？だからいつも曖昧にしてた？……俺の想いは、重かった？ 」
今にも泣き出しそうな顔で彼は笑う。
違う。違う。そんなんじゃない。私が情けない奴だから、貴方の顔を見たら泣いちゃいそうだったから。そんな不細工な顔、最後に見せたくなかったから。
貴方の中の�� Aちゃん �瓩蓮�泣き顔じゃない、笑顔で居てほしかったから―――。
涙と共に、抑えきれない想いが溢れ出す。
言葉を出そうとしても、嗚咽がそれらの邪魔をしてしまう。
動かなきゃ。
今度は、私が。
―――そう決意した瞬間、私はトランクを床に落とし、もつれそうになる足を必死に前に動かして、要らないプライドを投げ捨てた。
「 えっ、なになになに？！？ 」
驚く彼を抱き締めて、決壊した想いごと、嗚咽を溢す。
ごめんなさい、ごめんなさい。こんなタイミングにならないと素直になれなくて、いつも真っ直ぐな貴方に甘えっぱなしで。
貴方は私から逃げずにいてくれたのに、私は過去を言い訳に貴方からずっと逃げてた。
ほんとは大好きなのに。誰よりも好きなのに。ずっと嬉しかったのに。
「 好き、好きですっ、私も、伊沢さんのことが……ッ 」
今まで待たせてごめんなさい。
貴方の腕に飛び込む勇気がなくて、何度も悲しませて、ごめんなさい。
こんなにも待たせた私で良いなら。
こんなにも情けない私で良いなら。
もし、この返事が、まだ遅くないなら―――。
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年1月6日 19時
