イベント準備中 ページ20
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カフェでのバイトの翌日は、久々に訪れるオフィスでのバイトだ。
基本は自宅で記事を書いてそれを送るだけでも十分バイトとしては成り立っているのだが、定期的に顔を見せてほしいと頼まれているので、最低一ヶ月に一度は顔を覗かせるようにしている。
覗かせると言っても、することは変わらない。
ただ社長という鬱陶しい存在が増えるだけだ。
「 おはようございまーす 」
「 あ、Aちゃん!おはよ!今日も可愛いね!結婚しよ!! 」
「 腹筋しながらの告白はちょっと 」
編集部屋に入ると、まず目に入る変人、こと伊沢さんの姿。
彼は良い感じの汗をかきながら腹筋をしているが、いつも通り深く考えず素通りする。ああいうのは関わらないのが一番だ。
特に『 誰の 』とは決まっていないデスクに荷物を置き、福良さんから今日の分の雑務を貰いに行く。
が、今日はいつもとは少し違って、彼は私の姿を視界に入れた瞬間、「 あ、しずくちゃんとかはどう? 」と急に河村さんに話題をふり始めた。
「 しずくさんか…… 」
最近めっきり関わる機会が減った河村さんと目が合う。
そういえば、あの賭けの話はまだ有耶無耶なままだ。いつか話ができたら良いのだが。
そんな全く関係のないことを真顔の下で考えていると、今度は河村さんの方が「 良いね。彼女なら任せられる 」と口元に不敵な笑みを浮かべた。
いや、私なんぞに任せられるのなんて精々書類整理くらいですけど。
「 しずくちゃん、良かったら俺らと一緒にイベントの企画してみない? 」
「 ……え?私っすか? 」
「 うん。俺らだけでも勿論やろうと思えば出来るんだけど、今回は女性の意見も取り入れてみたくてさ。しずくちゃんってゼロからなにかを産み出すの得意だから、どうかなって 」
「 い、いやいやいやいや、無理ですって!私なんかよりもっと適任な人が居ます!絶対! 」
「 ふーん、じゃあ君は僕らの見る目が無いって言いたいんだ? 」
「 うっ……その言い方は、ズルくないですか 」
「 さぁなんの事だろうねぇ 」
別に河村さんと福良さんの見る目が無いと言いたいわけではないが、こればっかりは絶対に私ではない。
そもそも、私は社員でもなんでもない、ただのアルバイトだ。
そんな人間にこんな大役を任せるなんて、今回ばかりは見る目が無いと思います!!!
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作者名:朝田 | 作成日時:2021年1月6日 19時