喧嘩するほど ページ19
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白石さんのとっつきやすい一面を見てから、数日。
「 先輩って、地味ですよね 」
「 自覚してます 」
なんか、仲良くなった。仲良くなった……のか？
どちらかというと、前みたいな「 せんぱぁい、ここわかんなぁい 」みたいなキャラから「 は？なにこれ、めんど 」っていうキャラに変わったというか。私への当たりが露骨に強くなったというか。
まぁ兎に角、前のきゅるるん系よりは接しやすくなった。
バイト先に来て早々毒を吐かれるのは勘弁してほしいが。
「 そういえば、白石さん、ちゃんと伊沢さんに謝っときなよ。あの人、ファーストキス取られたって結構ショック受けてたんだから 」
「 え、あの歳でファーストキス……？きも 」
「 それは言わないお約束 」
「 てか、あれがファーストキスってことはもしかして、伊沢さんってまだどうて 」
「 あー早く着替えて掃除しないとなー！！ 」
後輩の言葉を思いきり遮り、ロッカーもわざとらしく大きく開く。
そんな私の『 もうこれ以上は言わせない 』という意思を感じ取ったのか、それからは白石さんも大人しく着替え始めた。
あんなにも可愛らしい白石さんの裏側がこんなにも腹黒かったなんて、知って良かったのか悪かったのか。
いや勿論相対的に見ると良かったのだが、時折、あの時の可愛らしい白石さんが恋しくなる。
あの頃の白石さんなら絶対『 童貞 』なんて単語言わなかった。
「 いらっしゃいませー！何名様でしょうかー？ 」
「 三人です 」
「 三名様ですね！こちらのお席へどうぞー！ 」
可愛らしい白石さんの面影があるとしたら、それは勤務中くらいだ。
自分の持っている容姿を最大限に活用して、来る客来る客にアイドル並みの愛嬌を振り撒く白石さん。「 もっと自然に笑って 」と店長に言われ続けた私とは大違い。
だけどなんだろう。前まではただの感心だったのだが、彼女の裏側を知ってからは、普段とのギャップが面白くてつい笑ってしまう。
「 笑うな 」
「 ごめんごめん 」
隣を通りがかった白石さんに脇腹を小突かれ、軽い謝罪を溢す。
見たか、あのすれ違い様の瞳。完全に睨んでた。
けどお客様を前にしたらコロッと表情変えて「 ご注文はお決まりでしょうかー？ 」と言うのだから、ある意味彼女は接客業のエキスパートなのかもしれない。
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年1月6日 19時
