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制服紛失事件 ページ16










 今日正午、私のロッカーからバイト用の制服が消えるという事件が発生した。
 だがその事件はすぐに解決することとなった。

 店長に頼まれて店の外にゴミを出しに行ったときに。








「 な、懐かしい…… 」








 ゴミ箱の蓋を開けると、そこには無くなったと思っていた私の制服。見つかったは良いが、生ゴミの中に押し込まれたそれは、とてもそのまま着れそうな雰囲気ではなかった。

 懐かしい。学生時代にこれとほぼ同じようなことをされた経験がある。
 あの時は確か体操服を水溜まりの中に落とされたんだ。
 こういうことに慣れたくはないが、今ばかりは耐性があって良かった。お陰であまり動揺せずに済んだ。








「 ……辞めようかな、バイト 」








 いや、こう言うと有らぬ誤解されそうだが、別に今回の件で「 あぁもぅまぢむりぃ……リスカしょ…… 」となったわけではない。

 ただ制服をゴミ箱にイーンされるということは、少なくとも私は誰かに嫌われているということだ。それも嫌がらせをしたくなるほど。
 ならば私の為にも相手の為にも、潔く身を引くのが最善の策だろう。




 元々、近いうちに辞めようと思っていたし。








「 店長すみません、今日終わったらお話良いですか 」
「 ん、しずくちゃんからのお話か。嫌な予感がするな〜 」
「 まぁそうおっしゃらず 」
「 分かってる分かってる。じゃあ閉店後ね 」








 店に戻って開口一番そう言うと、店長は軽口を叩きながらも、しっかり約束を取り付けてくれる。店長目的で来るお客が多いのも、今は少し分かる気がする。

 辞める意思を伝えると言っても、シフトの変更のことを考えるとすぐには辞めれない。
 だから今日は辞める意思を伝えるだけだ。本当に辞めるのは、今から一ヶ月後くらいだろうか。








「 それで?話ってなに 」








 バイト終わり。日中の大繁盛が嘘のように成りを潜めた静かな店内で、早速店長が片付けがてら話を切り出す。
 それに対して私も机をふきんで拭いながら、なんてことないように、辞める意思を口にした。








「 ここのバイトを、近々辞めようと思ってまして 」
「 やっぱりその手の話よねぇ 」
「 唐突ですみません 」
「 因みに理由は聞いて良い? 」
「 …… 」








 理由。理由か。素直に「 誰かに嫌われてるみたいなんで辞めます 」はどう考えても馬鹿だよぁ。








嘘のような本当→←上手く行かない



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作者名:朝田 | 作成日時:2021年1月6日 19時

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