cent huit ページ10
Severus side
今年のクリスマスは、例年に増して生徒達が浮き足立っていた。ただでさえ出来が悪いというのに。
『あーあ、面倒くさいなぁ……』
対してコイツは相変わらずだ。私の部屋に来ては愚痴を零したり、かと思えば論文を読み至極真っ当な意見を言ったりする。
『ねえ、聞いてくださいよ。私、踊ったこと無くて』
セ「ラミアー様にも出来ないことがあるとは驚きだ」
私の嫌味をものともせず、Aは私の元に寄ると顔を覗き込んだ。
『練習に付き合って下さい』
セ「断る」
私は即座に手元に視線を落とした。今彼女の目を見れば何かを悟られそうで、それが嫌で仕方なかった。
すると今度は部屋の隅にあった、とっくに埃を被った蓄音機から曲が流れだした。
私は咄嗟に彼女を見つめた。彼女の瞳に動揺を隠しきれていない私が映っていて、胸糞が悪い。
『Shall we dance?……なんちゃって』
彼女はおどけた調子で手を差し出した。その反面、彼女の笑顔は憎たらしいほど美しかった。
セ「……それは普通、男の台詞だ」
『遅れたご意見どうも』
その手を取らないつもりだった。だが、気づくと手を取っていた。思えば、Aに対してはいつもそうだと気づいた。
なんの意図か、流れているのは別れのワルツだった。
2人共何を言うわけでもなく、手を繋ぎ、私は背中に手を回した。その時、彼女が幼く見せる魔法を解いていることに気がついた。
狡い女だな、と口走りそうになる。
腕の中でと言うべきか、Aは必死にリズムを取ろうとしていた。自分から誘ったとは思えないほどの不恰好さだ。
セ「今お前がしているのはダンスかね」
『……教授は何でそんなに上手なんです』
セ「お前が下手なだけだ」
『……』
脳裏に薄暗いクラシカルな光景が蘇る。
死喰い人は定期で集会を開いた。腹の探り合いをかねてのものだったが、要はダンスはそれを生き抜くための社交的なスキルだった。だから、自ずと身につける必要があった。
私は彼女の揺れる黒髪を見つめながら言った。
セ「足が突っ立っているのは股関節を緩めていないからだ。姿勢は上半身を引き上げるように」
『答えになってませんよ……！』
悪戦苦闘するAは珍しかった。私は、Aに触れている手が妙に熱いことに気がついた。
馬鹿らしいと首を振りたくなる。この年になって、子供に戻ったような気分だ。
口を固く結ぶ。今にも「終わらなければいいのに」と言い出してしまいそうだった。
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ユーレイ(プロフ) - 羽音さん» メッセージ、イラストともにありがとうございます！楽しく拝見させてもらいました。自分の小説からイラストまで書いていただけるなんて本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年6月1日 23時) (
レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - mikittyさん» 素敵なコメントにこちらこそニヤニヤしました……この焦れったい感じが書くのが楽しくて、どうしても長引かせてしまいます笑 (2019年6月1日 23時) (レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
羽音(プロフ) - メッセージに書いていたURLです！→http://uranai.nosv.org/img/user/data/0/9/a/09ad2710a06e0237527c6512112dc071.png (2019年5月31日 21時) (レス) id: d257d5a444 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新されているとニヤニヤしちゃうくらいに好きです…お互いに焦れったい感じがたまりません！セブルスという人物をとても細かく丁寧に描いている素晴らしい作品です。これからも楽しみにしています！ (2019年5月31日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - パンジーさん» 空きコマのお供にしてもらえてよかったです！！(！？) さらに面白いと思って貰えるような展開にできたらと思ってます。楽しいコメントありがとうございました！ (2019年5月30日 21時) (レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：O
| 作成日時：2018年10月23日 12時
