cent dix-sept ページ19
私たちは真っ暗闇に立っているくせに、ただそばにいるだけで眠ってしまいそうなほど心地が良かった。
私は軋むように震える胸に顔を埋めた。このまま死んでしまえたらなんて、そんな陳腐なラブソングのようなことを本気で願った。
『……教授、プレゼントは届きました？』
セ「何だあれは」
『何だ、って……』
私は驚いて顔を上げた。
『ハンドクリームですよ。教授、いつも薬品作ってて手が荒れそうだから』
彼は珍しくきょとんしたような顔で私を見下ろしていた。そして口を無理やり動かしたように「そうか」とだけ答えた。
『教授にも知らない薬品があったなんて意外です』
私はくすくすと笑った。そして、それをやめるとじっと彼を見上げた。
セ「その顔はプレゼントが欲しいと言っているのか？」
私は下唇を噛んで目を細めた。しかし、彼の表情は変わらないどころかますます苦々しくなる。
『本当にないんですか……？』
セ「ないわけではない」
『なら早く』
セ「図々しさにかけては1人前だ」
私はめげずに視線で訴えた。教授はその視線を振り払うかのごとく手を上げたが、暫くすると観念したようにローブのポケットに手を入れた。
セ「ルシウスがお前にドレスをやったから……似合う宝石を見つけてやれと」
『……え？』
セ「……だが邪魔が入った」
そして彼が取り出したのは──シリウスから貰ったイヤリングだった。
『まさか……2人共同じものを……』
彼は今にも殺すという剣幕で、私は慌てて口を閉じた。
暫くの沈黙があった。私は、恐る恐る口を開いた。
『教授が……渡してくれれば……それで貴方からも貰ったことにもならないですか……？』
セ「どういう理屈だ」
彼は眉を寄せると呆れ返ったように言った。その顔を見て、私が諦めて笑おうとした時だった。
セ「動くな」
教授の筋張った手が首元に触れた。急な冷たい感触に、体が勝手にはねる。
『わっ！？』
彼は目を細めながらイヤリングを私の耳に当てた。私はか弱く彼の腕をつかむ他なかった。
『何もつけなくても、』
セ「動くな」
『この性悪教師……』
やっとつけ終わる頃には、私だけ変に息が上がっていた。彼の指が耳に触れるのが、擽ったくて仕方なかったのだ。
『もっと器用かと思ってました』
セ「かもな」
『は……？』
信じられない、と目を見開く。彼は生徒をいじめる時と同じような真っ黒い笑みを浮かべていた。
私は声を荒らげようと口を開きかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1733人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユーレイ(プロフ) - 羽音さん» メッセージ、イラストともにありがとうございます！楽しく拝見させてもらいました。自分の小説からイラストまで書いていただけるなんて本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年6月1日 23時) (
レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - mikittyさん» 素敵なコメントにこちらこそニヤニヤしました……この焦れったい感じが書くのが楽しくて、どうしても長引かせてしまいます笑 (2019年6月1日 23時) (レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
羽音(プロフ) - メッセージに書いていたURLです！→http://uranai.nosv.org/img/user/data/0/9/a/09ad2710a06e0237527c6512112dc071.png (2019年5月31日 21時) (レス) id: d257d5a444 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新されているとニヤニヤしちゃうくらいに好きです…お互いに焦れったい感じがたまりません！セブルスという人物をとても細かく丁寧に描いている素晴らしい作品です。これからも楽しみにしています！ (2019年5月31日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
ユーレイ(プロフ) - パンジーさん» 空きコマのお供にしてもらえてよかったです！！(！？) さらに面白いと思って貰えるような展開にできたらと思ってます。楽しいコメントありがとうございました！ (2019年5月30日 21時) (レス) id: 44ca875d76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：O
| 作成日時：2018年10月23日 12時
