断章取義【続】5

#211 ページ21

…




安田side




大「章大ー、先行ってて」




1年次最後の学年末テストも終わって、


1週間、まだ寒さの残る2月の終わりに先輩たちを見送る、卒業式がもうすぐ始まる。




そんな日の朝、何故かどんよりと悲しそうな、寂しそうな顔をする大倉が玄関に向かう俺にそう言った。




安「？どうしたん？顔はさっき洗ってたで？」




洗面所に向かって行く背中にそう言うと、


片手だけ出して「ええから、先行ってて」と念を押される。



安「先体育館おるから、はよ来な遅れるで」





洗面所に向かってそう伝え返事がないけど、そのまま体育館に向かった。






生徒会委員は、卒業式の最終準備のために6時半頃から動き始める。



となると、村上先輩と横山先輩は6時過ぎにはもう体育館にいるだろう。



そう思い、急ぐ訳もなく歩いて体育館に向かう。


村「お、早いやんけ」


安「おはよーございます」


横「ヤス、台本は？」





安「あっ！」




司会進行を大倉と一緒に引き受けたんやった。


今ならきっとまだ部屋に大倉おるかな？


先輩2人から離れて大倉に電話で伝えようとコールをかける。



大「…はい」


安「あ、おくら、俺台本忘れた…持ってきて欲しいねんけど、今まだ部屋おる？」



大「うーん、わかった、見つけてくるわ」





安「ごめんな、ありがとう。じゃあまた後でねバイバイ」



大「…あーい、ばいばい」





なんとなく、いつもよりワントーン以上低い大倉の声とテンションに違和感を覚え、


しかも、


最後の「ばいばい」があまりにも……リアルで……




安「考えすぎ？」









…

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