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「カイコクくんっ!」
 
 
 
どこか疲れを滲ませたような声で呼ばれて首を回す。

そこに少しほっとしたような顔の彼女が立っていて、そんな彼女の長い髪が揺れていた。
 
 
 
「どこにもいないから······西野さんもこんなところにいたんですね」
 
 
 
そう言いながら風で揺れる髪を耳にかけた。

表情はしまりなく笑っていて、そしてどこか薄っぺらく感じた。
 
 
 
「ははは。えらい急いで。そんなに坊っちゃんに会いたかったんか?」
「西野さんったら! 冗談にしても笑えないですぅー」
 
 
 
じーさんが声を掛けるとへらりと今度こそ完全に相好を崩した。

でも彼女の瞳は―――
 
 
 
(ガラス玉······)
 
 
 
「カイコクくん」
 
 
 
名前を呼ばれた。気づけば彼女がこちらを見ている。
 
 
 
「また、来てくれる?
 君との対局も終わってないし!
 それに······もっと仲良くしたいな、なーんてね!」
 
 
 
いつの間にか、彼女の瞳には生気が戻っている。

それでも先ほどまでの影がそう簡単に消えるわけではない。

彼女にも、色々事情があるのだろう。きっと。
 
 
 
(俺と、同じで······)
 
 
 
「言われなくても······」
 
 
 
どうせ、いつも来てる。

そう答えると、彼女の顔はパァッと明るくなる。
 
 
 
「ほんと!? じゃあ······」
 
 
 
―――また、会いに来てね!
 
 
 
そう告げて満面に笑みを浮かべる彼女に、背を向ける。

仲良く、か。
 
 
 
(ただの、傷の舐め合いだろ)

辟易、しかし再会 ―1―→←―2―



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作者名:花藺 | 作成日時:2018年5月25日 20時

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