私にも守れたら (ページ40)

今日:3 hit、昨日:13 hit、合計:25,043 hit

37話ページ40

まあ急に来て辛気臭い話を聞かせようとした私にも非があるので何も言わないが。

「でも、本当に悩んでいるんです…私」

「……まず、何でやめようと思ったんだ」

「最近、疲労がすごくて…。この前、気付いたらブース前で寝ていました」

「あのランク戦嫌いのお前がか。それは重症だな」

「はい…。なのでもう記憶操作でもしてもらって辞めようかと…」

「少し大袈裟な気もするが……まあ、お前が決めたのなら止めない」

さっきとは打って変わって優しくそう言う奈良坂さん。イケメンだ。

「ありがとうございます。じゃあ…私は」

ガタッ

お礼を言って退出しようと立ち上がったとき、部屋の扉が勢いよく開いた。

「三輪先輩…」

「鶴間」

そこには三輪先輩が立っていた。

「やめるのか」

古寺先輩の寝息しか聞こえないようなしんとしていた空気を破ったのは三輪先輩だった。
その顔は少し寂しそうで…。

その顔を見た私は三輪先輩にこう答えた。

「いえ、やめません」

「三輪、こいつ、色々疲れて……って、は？」

「…そうか。さっき辞めると聞こえた気がしたが」

「撤回します。やめません。三輪先輩がいる限り！」

「……」

三輪先輩のあの寂しそうな顔…に見えただけだけど。

けれど、私はそんな三輪先輩の顔を見て我に返った。

ボーダーには三輪先輩がいる。
私の数少ない尊敬できる先輩がいるのだ。そんな理由でやめてられないな。

親身になって相談に乗ってくれた奈良坂さんには申し訳ないが、私はまだやめないぞ。

「でもお前、疲れてんじゃないのかよ」

「よくよく考えたら私、最近夜更かしばっかだった気がします。多分それだ」

「何だよそれこっちが疲れるわ」

「すみません。今度たけのこの里あげます」

「許す」

奈良坂先輩…ちょろい。

とはいえ、奈良坂先輩には悪いことをした。しょうもない茶番になってしまった話に付き合ってくれただけでも感謝せねば。たけのこ3箱くらいあげよう。

「…体調は大丈夫なのか」

「はい！これから直していきます！」

「ならいい」

くうううう〜！カッコイイ！流石三輪先輩だ！

片手の拳を握りしめて三輪先輩のかっこよさを身にしみて痛感させる私。

「…あほくさ」

「これからも一生ついていきます！」

「いや、そこまではいい」

そんな他愛ない話をしながら、私は何事もなかったかのようにボーダーを続けることを決意した。

＿＿＿＿
とんだ茶番お許しを…