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所は変わって旅館中庭。
現場班は瀬川の無実のためのさらなる証拠を見つけるため、地道なゴミ拾いもとい戦利品集めに精を出していた。
時刻は4時、西の空におわす太陽は緩やかに山の稜線と傾くも、未だ沈む様子は見えない。雲一つない開けた青色の空には月も上らず、まだまだお天道様の独壇場である。
暑いのはあんまり好きじゃない。小さく茂みに屈んだ格好のままで頬に流れた一筋の汗を拭きとり、公由は心の中だけで呟いた。
汗を吸った白いハンカチが涙の形に滲んで、無地の生地に灰色の模様を描く。まるで泣いてるみたいだなんてつい感傷的なことを考えた。
きらりと見えた小さな輝きを頼りに茂みを漁る。布一枚隔てた向こうに手ごたえがあった。
慌てて引き寄せたそれはと見れば、白地に赤色の犬を象ったロゴの描かれた空き缶である。
事件に重大なかかわりがあるようには見えない。またハズレ。
そういえば、今日の朝の占いでは、公由の星座は最下位だった。
なんだかなあ。一つ小さくため息をついた。
左手には徳用サイズのゴミ袋、右手には軍手。
探偵の恰好とは言い難い。完全にゴミ拾いボランティア活動中のおばちゃんだ。
ごそごそと茂みに手を突っ込んで集まったのは、ガムテープに電池、それにさっきの空き缶程度のものばかり。はっきり言ってほぼほぼがらくたのようなものだ。事件のトリックや、そうでなくても核心にかかわっていないのであれば。
ただ、完全にそうと切り捨てることはできない。
事件の謎というのはあまりにこれ見よがしに築かれた、言うなれば実用に優れた守備力を持つ要塞だ。
だが、往々にしてそれをこじ開ける証拠という名の鍵は、吹けば飛ぶほどに儚く、いとも容易く指の間をすり抜ける。その事実は、公由たち探偵を前にしても少しも揺らぐことはない。探偵として事件に携わってきて、嫌というほど思い知らされてきた。
今回もそうだ。
何か一つでも、それこそ塵芥に満たない大きさでも、ミスをすれば。
きっとその隙間から真実は逃げていくのだろう。溢れ、解けて最後には消えてしまう。
だから公由は、たとえ地道な証拠収集でも気を抜くことはしなかった。掌から零れてしまったものは、もう二度と取り戻すことができないのだから。暴くべき真実も、漸く知った仲間も、守れなかったなんて言いたくはないから。
公由は決意を新たに茂みに向き合った。
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神羅(プロフ) - 蛍火さん» すみません、もう締め切っておりまして……。それに、今は殆ど機能しておりませんので……。ボチボチ更新しなければと思うのですが、私も一応受験生でして……。すみません。 (2018年7月9日 23時) (レス) id: 57d9444f68 (このIDを非表示/違反報告)
蛍火 - お話読ませていただきました。もしも席がまだ空いているのなら、社員として、入らせていただけると嬉しい所存でございます。この小説を読もうとしたきっかけは、ラハルちゃんの紹介です。お考えの方よろしくお願い申し上げます。 (2018年7月3日 14時) (レス) id: 62a90d8188 (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - 浅葱さん» 頑張ります! ちょこちょこ更新しますね (2018年3月4日 21時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - すごい、面白いです!更新待ってます!! (2018年3月3日 13時) (レス) id: 2921f40b7a (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - 花園イリアさん» はい! おかげさまで突入できました! 不定期更新ですが、これからもよろしくお願いいたします(^-^ゞ (2017年5月5日 14時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)
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